診断の基本は問診です。
認知症の診断、特にアルツハイマー型も含めて、半年ぐらいかけて客観的に見て認知症症状が進行している、ということが裏付けられる必要があります。
受診時には家族や介護者が一緒に来たほうが、診断がスムーズになります。
それで一定以上の低下があれば、他に治療するものがないか、という診断過程を踏みます。
例えば、薬の飲み過ぎなど副作用で症状が出てきてないか、内臓の病気はないか、甲状腺の病気がないか、脳腫瘍のような手術が必要な病気がないか、ということを鑑別して除外していって、アルツハイマー型認知症が残ってくる、という形にもっていきます。
その段階になってくると、他の認知症を除外するための、脳MRIやCTという画像検査が有用になってきます。
昨今は、脳アミロイドというアルツハイマー型認知症に鍵となるタンパク質を検出するために、髄液検査やアミロイドPET検査というものを、臨床応用ができないかという期待がされています。
そうしたものが使えれば、さらに診断がしやすくなるのでは、と思います。
これまで、アルツハイマー型認知症と診断された患者さんには、飲み薬や貼り薬が用いられてきました。
ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン、これらは脳の働きを促進させる薬です。
また、気持ちを落ち着かせる作用があるメマンチンという薬もあります。
これらを組み合わせて診療することで認知症の進行を遅らせます。
大事なのは継続していくことで、これらの効果は在宅期間が伸びるというものです。
施設入所のタイミングが3〜4年遅れるということです。
レカネマブというアルツハイマーの新薬が開発されて、テレビなどで知られるようになりました。
脳アミロイドβが脳の中にあるというのがアルツハイマー型認知症の病理学的な診断の一つの基準です。
この薬は、脳アミロイドβという異物を除去するための、免疫の基本となる抗体を注射するというものになります。
それを注射することで、常に患者さんにはアミロイドβに対する抗体があるので進行を遅らせる、という治療法です。
臨床試験では、認知症を発症してないがその直前というような患者さん、もしくは軽度のアルツハイマー型認知症の患者さんを対象として、その治療薬が投与されました。
投与されなかった人たちに比べると、認知症の悪化率が3割減りました。
認知機能が維持される、もしくは頭が良くなるという薬ではないです。
昔からある四つの薬と、進行遅らせるという観点からは少し似てますが、特定の原因タンパク質に作用するというところが、画期的な今までにない薬だと思います。
アミロイド関連画像異常(ARIA)というものが出てきます。
ほとんどが症状のない、画像異常だけというパターンが多いですが、脳炎や脳出血といった副作用を起こしてくる方がいます。
元々、レカネマブという薬は炎症を引き起こしてアミロイドβ蛋白を除去していくものなので、そうしたことがおきます。
脳の中に炎症が起こったら脳炎、血管に炎症が起こったら血管が破れて、ちょっと、もしくは大きく出血を起こす方が全体の100分の1ぐらいいます。
なので、どなたも適用になるっていうわけではなく、専門医に相談されて、投与を検討されてほしいと思います。