アルツハイマー型認知症の診断と治療

前回は、アルツハイマー型認知症とはどのようなものなのか、おおまかな概要を、関西医科大学 神経内科学講座 主任教授 藥師寺 祐介先生よりお話ししていただきました。 今回は、アルツハイマー型認知症の検査や診断に至るまで、また内服での治療法やテレビなどでも話題となった最新のお薬などについてお話を伺います。

 

検査から診断に至るまで

 

 

診断の基本は問診です。

認知症の診断、特にアルツハイマー型も含めて、半年ぐらいかけて客観的に見て認知症症状が進行している、ということが裏付けられる必要があります。

受診時には家族や介護者が一緒に来たほうが、診断がスムーズになります。

それで一定以上の低下があれば、他に治療するものがないか、という診断過程を踏みます。

例えば、薬の飲み過ぎなど副作用で症状が出てきてないか、内臓の病気はないか、甲状腺の病気がないか、脳腫瘍のような手術が必要な病気がないか、ということを鑑別して除外していって、アルツハイマー型認知症が残ってくる、という形にもっていきます。

その段階になってくると、他の認知症を除外するための、脳MRICTという画像検査が有用になってきます。

 

認知症初期診断のプロセス

 

昨今は、脳アミロイドというアルツハイマー型認知症に鍵となるタンパク質を検出するために、髄液検査アミロイドPET検査というものを、臨床応用ができないかという期待がされています。

そうしたものが使えれば、さらに診断がしやすくなるのでは、と思います。

 

 

アルツハイマー型認知症の治療法

 

 

これまで、アルツハイマー型認知症と診断された患者さんには、飲み薬や貼り薬が用いられてきました。

ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミン、これらは脳の働きを促進させる薬です。

 

また、気持ちを落ち着かせる作用があるメマンチンという薬もあります。

 

これらを組み合わせて診療することで認知症の進行を遅らせます

大事なのは継続していくことで、これらの効果は在宅期間が伸びるというものです。

施設入所のタイミングが3〜4年遅れるということです。

 

現在のアルツハイマー病薬の効能

 

 

新薬 レカネマブの概要

 

 

レカネマブというアルツハイマーの新薬が開発されて、テレビなどで知られるようになりました。

脳アミロイドβが脳の中にあるというのがアルツハイマー型認知症の病理学的な診断の一つの基準です。

 

この薬は、脳アミロイドβという異物を除去するための、免疫の基本となる抗体を注射するというものになります。

それを注射することで、常に患者さんにはアミロイドβに対する抗体があるので進行を遅らせる、という治療法です。

臨床試験では、認知症を発症してないがその直前というような患者さん、もしくは軽度のアルツハイマー型認知症の患者さんを対象として、その治療薬が投与されました。

投与されなかった人たちに比べると、認知症の悪化率が3割減りました。

 

認知機能が維持される、もしくは頭が良くなるという薬ではないです。

昔からある四つの薬と、進行遅らせるという観点からは少し似てますが、特定の原因タンパク質に作用するというところが、画期的な今までにない薬だと思います。

 

 

レカネマブの副作用

 

 

アミロイド関連画像異常(ARIA)というものが出てきます。

ほとんどが症状のない、画像異常だけというパターンが多いですが、脳炎脳出血といった副作用を起こしてくる方がいます。

元々、レカネマブという薬は炎症を引き起こしてアミロイドβ蛋白を除去していくものなので、そうしたことがおきます。

脳の中に炎症が起こったら脳炎、血管に炎症が起こったら血管が破れて、ちょっと、もしくは大きく出血を起こす方が全体の100分の1ぐらいいます。

 

なので、どなたも適用になるっていうわけではなく、専門医に相談されて、投与を検討されてほしいと思います。

 

 

 

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