認知症に至るまでには、認知症と正常の間には、軽度の認知症があります。
しかし、正常と軽度の認知症の間には、なかなか線を引くことが難しいとされています。
歳を取ると誰でも物忘れはしますが、認知症の人の物忘れはそれとはかなり違っているため、区別をすることができます。
認知症というのは、認知機能の問題があるだけで無くて、それがあることで「生活に支障をきたしている」という点が重要です。
「薬がきちんと飲めなくなった」「複雑な手順を含む料理ができなくなった」「整理整頓ができなくなった」という症状がある場合は、認知機能の低下が示唆されるので、注意が必要です。
また、認知機能が低下すると、人間の防御反応で「怒りっぽくなった」ように見えることがあります。
逆に気が滅入って抑うつ的になったり、やる気がなくなる人もいます。
このような気持ちの変化も認知機能の変化に関わってきます。
このような変化に早めに気がつけば、認知症を早期に発見することができます。
認知機能には「見当識」という機能があります。
これは「自分がどこにいるか(時間軸的・空間的)」認知機能で、これが障害されるのは主にアルツハイマー病において見られる症状です。
軽度の認知障害の段階では、このうち「時間軸的に自分がどこにいるのか」という感覚が弱くなってきます。
この段階になると、よく知っている場所でも迷ったりします。
また、介護者の困りごとで多いのが「行動心理症状」です。
怒ったり、妄想をもったり、幻覚をもったり、落ち込んでやる気がなくなるといった症状です。
一般的には進行した認知症で見られますが、軽度の認知障害の段階で見られることもあります。
ここからさらに進行すると、日常生活で身の回りのことができなくなる、という段階になります。
例えば、老夫婦で暮らしていて、片方の認知機能が低下してくると、行動心理症状によってもう一方へ「常に怒っている状態」になることがあります。
このような状況では、軽度認知障害の段階から夫婦の関係性が悪くなるということが起こり得ます。
早い段階で認知機能の低下に気づいて、適切に介入ができれば、このようなことは回避することができるのです。
本人の状態の安定や、生活設計の改善、将来的な話を、認知機能が安定している時にすることができるというメリットもあります。
認知症は、少しずつ、気づかぬうちに進行していきます。
これは裏を返せば、長い時間をかけて進行するため、出来ることがたくさんあるんだ、と考えるのが良いでしょう。
今現在、認知症に関する議論は、「予防」から「共生」へと重点が推移しています。
「認知症」という言葉、病気への感じ方や考え方を変えて、ポジティブに考えて欲しいと思います。
患者本人も、その家族も、認知症については「おおまかに」捉えることが大切です。
「きちんと出来ない」「あれもこれも出来なくなった」ではなく、「まだこれが出来る、あんなことも出来る」と前向きに、考えるのが良いでしょう。