骨はずっと新陳代謝をしています。
「破骨細胞」と呼ばれる細胞が、骨を少しずつ食べて、綺麗にして、そこにまた新しい骨を作ります。
新しい骨を作るのは「骨芽細胞」と呼ばれる細胞で、破骨細胞と骨芽細胞の働くスピードのバランスによって、骨の成長スピードが一生の中で変化していきます。
骨芽細胞の働くスピードの方が速いのが成長期です。
成長期以降は、「壊す」破骨細胞と「作る」骨芽細胞の働くスピードがおよそ同じ程度で維持されていきます。
そして更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することによって、破骨細胞の働きが暴走します。
壊すスピードが速くなるため、骨の量がどんどん減少してしまうのです。
骨の減少スピードが速ければ、骨粗鬆症となります。
緩やかに減る人であれば骨の量はある程度維持されますが、骨の量が減少しない人はいません。
大体70歳代になると、平均の骨密度がほとんど骨粗鬆症の領域に近づきます。
年齢を経るごとに、また閉経後に減少スピードが加速していきます。
これが骨粗鬆症の病態メカニズムです。
しかし、全ての人が骨粗鬆症になるわけではありません。
なぜでしょうか。
これは、破骨細胞の壊すスピードに影響するのが、女性ホルモンだけではないためです。
日々の栄養の充足度や喫煙歴、腎臓病・糖尿病などの生活習慣病なども、骨の代謝に影響を及ぼしています。
骨粗鬆症は痛くも痒くもない、いわゆる「Silent Disease(静かなる病気)」です。
自分で症状として分かることがあるとすれば、骨折した時です。
まさに骨粗鬆症の治療ポイントは骨折の予防にあります。
骨折予防にはまず、骨密度を知ることが大切です。
骨密度を測定する機器は、地域の病院や公共施設に置いてあったり、イベントなどで無料測定を行なっていたりするため、そのような機会を利用して、ぜひ測定してみましょう。
骨粗鬆症の治療では、ビタミンD・ビタミンKを十分に補充し、破骨細胞によって壊された骨を修復する環境を整えてあげることが第一の選択肢となります。
更年期障害の治療としてホルモン補充療法を行なっている場合は、ホルモン補充療法が骨粗鬆症の予防・治療となります。
また、ホルモンが減少して閉経が済んだ人に対しては、SERMと呼ばれる薬があります。
これは、骨にある女性ホルモンの受容体だけに効く薬です。
更年期障害治療としてホルモン補充療法が合っていた人には、ホルモン補充療法を終えた後、SERMへの移行を推奨することがあります。