骨粗鬆症の病態メカニズムと治療法:加齢と閉経がポイント?

骨粗鬆症は骨の量が減少することで骨が「鬆(す)」のように脆くなり、骨折しやすくなる病気です。加齢とともに誰もなり得る病気であり、特に女性の場合は閉経後の急激なホルモン量の変化によって起こりやすいと言われています。今回は、骨粗鬆症の病態のメカニズムとそれに影響するリスク因子、診断に至るまでの重要なポイント、具体的な治療法などについて、医療法人社団善方会・よしかた産婦人科の善方 裕美先生に教えていただきました。

 

骨粗鬆症の病態メカニズム:閉経後に急激に進行、年齢とともに骨密度低下は避けられない!

 

 

骨はずっと新陳代謝をしています。

「破骨細胞」と呼ばれる細胞が、骨を少しずつ食べて、綺麗にして、そこにまた新しい骨を作ります。

新しい骨を作るのは「骨芽細胞」と呼ばれる細胞で、破骨細胞と骨芽細胞の働くスピードのバランスによって、骨の成長スピードが一生の中で変化していきます。

骨芽細胞の働くスピードの方が速いのが成長期です。

 

成長期以降は、「壊す」破骨細胞と「作る」骨芽細胞の働くスピードがおよそ同じ程度で維持されていきます。

そして更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することによって、破骨細胞の働きが暴走します。

壊すスピードが速くなるため、骨の量がどんどん減少してしまうのです。

骨の減少スピードが速ければ、骨粗鬆症となります。

 

エストロゲンの減少と骨粗しょう症

 

緩やかに減る人であれば骨の量はある程度維持されますが、骨の量が減少しない人はいません。

大体70歳代になると、平均の骨密度がほとんど骨粗鬆症の領域に近づきます。

年齢を経るごとに、また閉経後減少スピードが加速していきます。

これが骨粗鬆症の病態メカニズムです。

 

しかし、全ての人が骨粗鬆症になるわけではありません。

なぜでしょうか。

これは、破骨細胞の壊すスピードに影響するのが、女性ホルモンだけではないためです。

日々の栄養の充足度や喫煙歴、腎臓病・糖尿病などの生活習慣病なども、骨の代謝に影響を及ぼしています。

 

 

骨粗鬆症の診断に至るまで:自分の骨密度を把握、骨折予防がポイントに

 

 

骨粗鬆症は痛くも痒くもない、いわゆる「Silent Disease(静かなる病気)」です。

自分で症状として分かることがあるとすれば、骨折した時です。

まさに骨粗鬆症の治療ポイント骨折の予防にあります。

 

骨折予防にはまず、骨密度を知ることが大切です。

骨密度を測定する機器は、地域の病院や公共施設に置いてあったり、イベントなどで無料測定を行なっていたりするため、そのような機会を利用して、ぜひ測定してみましょう。

 

 

骨粗鬆症の治療法:ビタミンD・Kを十分に補充、ホルモン補充療法がそのまま予防にも

 

 

骨粗鬆症の治療では、ビタミンD・ビタミンKを十分に補充し、破骨細胞によって壊された骨を修復する環境を整えてあげることが第一の選択肢となります。

更年期障害の治療としてホルモン補充療法を行なっている場合は、ホルモン補充療法が骨粗鬆症の予防・治療となります。

 

婦人科医の骨粗しょう症薬物治療

 

また、ホルモンが減少して閉経が済んだ人に対しては、SERMと呼ばれる薬があります。

これは、骨にある女性ホルモンの受容体だけに効く薬です。

更年期障害治療としてホルモン補充療法が合っていた人には、ホルモン補充療法を終えた後、SERMへの移行を推奨することがあります。

 

 

 

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