骨粗鬆症の疾患概要part2~骨粗鬆症の検査・診断・治療法~

前回の記事では、骨粗鬆症がどのような病気なのか、その症状や罹患率、生活に及ぼす影響についてご紹介しました。 引き続き、独立行政法人労働者健康安全機構 山陰労災病院院長 萩野浩先生から、骨粗鬆症の検査・診断・治療などについて、詳しいお話を伺っていきます。

骨粗鬆症で骨折しやすい部位

骨粗鬆症では、軽い転倒程度で骨折しやすくなってしまうという特徴があります。

骨粗鬆症によって骨折しやすい部位は、高齢者の4大骨折と言って、①背骨、②腕の付け根、③手首、④股の付け根の、大きく4つに分類されます。

 

中でも大腿骨近位部(股の付け根部分)の骨折は、動けなくなり命にも関わる重篤な状態になりやすく骨卒中と呼ばれています。この部分の骨折では約95%の割合で手術が必要です。

股の付け根と背骨の骨折では、それぞれ折れていない方に比べて死亡の危険性が6.7倍、8.6倍も高いと言われています。股の付け根を骨折した高齢者の、5人に1人が1年以内に亡くなるというデータもあるのです。

歩けなくなる・動けなくなるだけに留まらず、その後の生命予後にも関わってくるのが、骨卒中と呼ばれている所以です。

 

骨粗鬆症の検査・診断

骨粗鬆症を発症しているかどうか、骨粗鬆症危険度判定という方法を使って自分で調べてみることができます。

以下の計算式にご自分の体重と年齢を当てはめて出た数値を、表でチェックしてみましょう。

ここで出てくる骨密度とは、骨を構成するカルシウムやリンなどのミネラルが、骨の単位面積あたり骨量としてどれくらい詰まっているかを算出したもので、骨の強さを表す指標です。

骨密度測定にはいくつか種類があり、それぞれに特徴、メリット・デメリットがあるため、医師に相談のうえご自分に合った測定方法を選ぶとよいでしょう。

 

多く用いられているものを以下に2つご紹介します。

DXA(デキサ):X線を用いる。太ももの付け根の骨、腰の骨、前腕骨などの部位で骨密度を測定する。測定方法としては最も精密といわれている。

超音波法[2] :かかとやすねに超音波を当てる。測定がDXA法より容易だが、精度は劣る。

 

診断には3つのパターンがあります。

骨折の既往の有無と、骨密度測定の結果が鍵となってきます。

①骨密度測定の結果、骨密度が若年成人(20〜40歳)と比べて70%以下である場合。

(現段階では骨折がなくても、骨粗鬆症と診断される。)

太ももの付け根や背骨を骨折している場合。

(骨密度未測定・骨密度が正常の場合でも、骨粗鬆と診断される。)

③上記以外の部位の脆弱性骨折があり、骨密度が若年成人の80%未満の場合。

 

骨粗鬆症の治療法

健康な骨では、常に新陳代謝が行われています。

骨を壊す細胞を破骨細胞骨を作る細胞を骨芽細胞と呼びますが、この2種類の細胞が、いいバランスで骨を壊す&作るを繰り返しているのです。

しかし、閉経による女性ホルモンの減少、運動不足、寝たきり、加齢といった要因が重なると、新陳代謝のバランスが崩れ、破骨細胞が骨を壊し過ぎ、骨芽細胞が骨を作るのが追いつかなくなって、骨粗鬆症を発症してしまいます。

 

骨粗鬆症の治療薬は、破骨細胞を抑え込む薬と、骨芽細胞に働いて骨をどんどん作らせる薬の大きく2種類に分けられます。

患者さんの年齢、骨密度の状態、薬を代謝する腎臓・肝臓の機能に合わせて処方されます。

 

骨粗鬆症の治療は、2〜3ヵ月程度では効果は出て来ず、少なくとも数年間治療しなければなりません。

治療の副作用としては、薬により血液中のカルシウムが高値になること、薬によっては吐き気が起こることなどがあり、注意が必要です。

また、1000人から10万人に1人(報告により差があります)の割合で、歯の一部が露出してしまう、あるいは抜歯後治りにくくなるという副作用が起こる場合があるため、骨粗鬆症の治療中には、並行して歯科医院で口腔管理を定期的に行うことも大切です。

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