骨粗鬆症の疾患概要part3~骨粗鬆症の運動療法・食事療法~

骨粗鬆症では、ちょっとした転倒や衝撃で骨折を引き起こしやすくなってしまいます。特にご高齢の方では、骨折やそれによる寝たきりで健康寿命を縮めてしまうケースが少なくありません。 今回は、骨粗鬆症やそれによる骨折を防ぐために大切な運動・食事・生活習慣について、独立行政法人労働者安全機構 山陰労災病院院長 萩野浩先生にお話を伺いました。

骨粗鬆症の運動療法

運動は、自分に合ったものをまずは始めること・そして続けること。この2つが大事です。

ご高齢で骨粗鬆症になった方にとっては、激しい運動は難しく、かつ危険なため、ここでご紹介する2種類のロコモーショントレーニングがお勧めです。

 

①片脚立ち

1分間、片脚立ちをします。

バランスが取りづらくフラフラする方は、転倒予防のため、必ず机や壁などすぐに手をつける環境を用意して行ってください。手をつきながら行っても十分効果があります。

これを両脚1分ずつ、毎日3セット(合計6分)行うことで、バランスがとれて転倒しにくくなることが分かっています。

 

②スクワット

膝頭がつま先よりも先に出ないよう、腰を引きながら膝を曲げます。

座るような格好で膝と腰を落とし、ゆっくり立ち上がる運動を行います。

「へっぴり腰」を意識すると膝に負担が掛かりにくくなります。

しゃがんだ時にそのまま尻もちをつくと大変危ないため、動かない椅子を後ろに置いて行ってください。

 

片脚立ちもスクワットも、最初は2、3回からで構いません。

筋力・体力に合わせて少しずつ回数や頻度を増やしていきましょう。

これ以外にも、ウォーキングや軽いジョギング、ジャンプなど、楽しく安全に続けられる運動を行うことが重要です。

 

骨粗鬆症の食事療法

食事療法では、骨の材料をしっかりと摂取することが重要です。

日本人は、平均的にカルシウムの摂取量が足りていないと言われています。

骨粗鬆症の予防・治療のために、1日にカルシウム400㎎摂取を目指して、食事を工夫してみましょう。

200㎎=1単位とすると、ヨーグルト160g、プロセスチーズ30g、牛乳180mlなどが1単位に当たります。

このうち、好きな食品を2単位選んで、日頃の食事内容に追加するとよいでしょう。

量が多く摂取しやすい牛乳がお勧めです。

カルシウムは腸から吸収されます。摂り過ぎた分は吸収されずに排出されるので、摂りすぎを心配する必要はありません。

 

カルシウムを腸管からどんどん身体に引き入れる働きをしてくれるビタミンDも、骨粗鬆症治療のために積極的に摂取したい栄養分です。

サケ・ウナギ・サンマなど、魚類に多く含まれるほか、キノコ類にも含まれています。特に干し椎茸はビタミンDが豊富です。

 

また、日光を浴びることで体内でビタミンDを生成することができます。

食物から摂ることに加えて、定期的に日光浴を行うとより良いでしょう。

紫外線は肌のシミやシワ、皮膚がんの原因ともなり得るので、長時間当たりすぎないように注意をしながら行ってください。

 

骨の土台はタンパク質で出来ています。

リンとカルシウムの結晶がタンパク質にくっつくことでしっかりとした骨になるのです。

1日のタンパク質摂取推奨量は50〜60g/日ですが、高齢者では不足しがちであるため、肉・大豆・魚などの食品を意識して取り入れることが大切です。

加えて、納豆、春菊、ほうれん草などに豊富なビタミンKも、骨粗鬆症の予防に大切な栄養素です。

 

「さあにぎやかにいただく」という合言葉があります。

「さかな・あぶら・にく・ぎゅうにゅう・やさい・かいそう・いも・たまご・大豆製品・くだもの」の頭文字をとったものです。

これらを適切にバランスよくとるように心がけることが、骨粗鬆症に限らず、健康的な生活を送るための身体づくりに重要だと言えるでしょう。

 

日常生活における注意事項

転倒による骨折は、屋内、普段生活している住居で起こることが非常に多いと言われています。

特に冬は、ストーブやこたつがあり床を這っているコード類が増えることから、それに引っかかって転倒するケースが多発します。

他にも、絨毯やキッチンマットの捲れ、手すりがついていない階段、散らかっている新聞や雑誌、浴室、玄関の段差など、普段過ごしている環境のなかにも転倒のリスクが上がる要素が数多く潜んでいます。

これらを改善することにより、転倒のリスクもぐっと下げることができるので、ご自身のお家の状態をぜひチェックしてみてください。

外に出るときにスリッパやサンダルは避け、歩きやすい靴を履くというちょっとしたことでも転倒防止になります。

まさに転ばぬ先の杖、を意識して、転倒を予防していきましょう。

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