小児における新型コロナウイルス感染症の実態

新型コロナウイルスのオミクロン株は感染力が強く、今まで感染しづらいと考えられていた小児の間でも感染が拡大することが予想されます。「小児の多くのケースは無症状か、または軽い風邪と区別がつかない程度であり、治療が必要になるケースはほとんどない」と森内先生はおっしゃいます。しかし、稀に重症化する場合があります。 では、どのような対処法を行うべきでしょうか。長崎大学病院 小児科 教授 森内 浩幸先生に詳しく解説いただきました。

 

集団生活での新型コロナウイルス感染症のリスク

 

 

学校では、きちんとした新型コロナウイルス感染症の対策がとられています。

しかし、今後はワクチン未接種である子供たちが、相対的に感染しやすくなる状況が懸念されます。

オミクロン株の流行期に入った現在、南アフリカでは5歳未満の子供の感染者の割合が増えていることが報告されています。

これはおそらくウイルスの感染力が強くなったために、大人も子供も感染しやすくなったことを示していると思われます。

 

これまで、子供はウイルスを体内へ取り入れる受容体の発現のレベルが低く、感染が成立しにくいと考えられていました。

現在は、そのような生物学的特性を凌駕する勢いで感染するようになっており、子供達の世界でも新型コロナウイルスの感染は広がりやすくなるだろうと思われます。

 

 

小児における新型コロナウイルス感染症を疑う所見

 

 

一番多い所見は無症状です。

しかし、それ以外の症状が出る場合でも、普通の風邪、特に軽い風邪との区別はほとんどつきません。

嗅覚・味覚障害以外に特別な診断の手がかりは少ないのですが、小さい子供だとそれらの症状の有無を聴取することすら期待できません。

そのため、疫学情報を読み解く必要があります。

具体的には、子供たちの新型コロナウイルス感染者との接触の可能性の高さを考慮して、症状と組み合わせることによって新型コロナウイルス感染症者を拾い上げます。

 

 

小児における新型コロナウイルス感染症の治療法

 

 

基本的に何か治療が必要となる場合はほとんどありません。

よく使用されるのは、解熱鎮痛剤アセトアミノフェンです。

この点は、普通の風邪の治療と何も違いはありません。

 

稀に子供達でも重症化することはあります。

呼吸苦に対しては酸素投与を行ったり、成人で使われるレムデシビルという抗ウイルス薬を使ったりすることもごく稀にあります。

また、そのような薬剤を使用せざるを得ない症例の多くは、全身の様々な部位に強い炎症が起きているため、デキサメタゾンという炎症を抑えるための薬を投与することもあります。

 

成人で使用されている多くの薬剤が、小児では未承認であるため、成人同様の多様な治療バリエーションを持つことは難しいです。

 

 

重症化のメカニズムとそのリスクについて

 

 

成人でも小児でも肥満があるとかなり重症化します。

他の呼吸器感染でも同様の傾向は認めますが、特に新型コロナウイルス感染症では顕著です。

他の感染症罹患時は軽症だったとしても、新型コロナウイルス感染症にかかった肥満児は重症化リスクが高いと認識すべきでしょう。

 

どのような風邪のウイルスでも言えることですが、2歳未満では呼吸苦が出現しやすく、新型コロナウイルス感染症の場合でも同様に注意が必要です。

インフルエンザやRSウイルスは、年少の小児ほど重症化しやすいのに対して、新型コロナウイルス感染症は、3歳から10代前半くらいの年代の症状が最も軽いと言われています。

逆に、10代後半や20代で重症化します。

 

一般の風邪の原因となるコロナウイルスは4種類存在しますが、小児期に罹患することで免疫を獲得するため、成人が罹患することはほとんどありません。

新型コロナウイルスに対しては、若者の免疫系も若干過剰に反応し、重症化してしまうことがあります。

罹患直後は多量のウイルスを排泄しますが、症状は軽症です。

重症化は、ウイルス排泄量がかなり減少した感染後1週間から10日ほど経った時期に見られます。

このことからも、重症化はウイルス自体が起こすわけではなく、私たちの免疫の不適切な過剰反応によって起こる病態といえます。

小児の中でも、年長児とよく風邪を引く年少児では、重症化のメカニズムが異なることを認識しておいた方が良いかもしれません。

 

※2021年12月末撮影

 

 

 

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