くも膜下出血の合併症とその治療

くも膜下出血は致死率も高い危険な病気であることが知られています。 今回はくも膜下出血の合併症としてどのようなものがあるか、どのような治療を行うのか、そして入院後の経過・入院期間等についての専門的なお話を、国立循環器病研究センター脳神経外科の片岡 大治先生に教えて頂きました。

 

くも膜下出血の合併症

 

 

合併症には発症早期に起こる急性期のものと、後から遅れて発症するものがあります。

 

まず発症早期に起こる合併症で、一番重篤なものは再出血であり、時に命にかかわる事があります。

そして特に注意が必要な合併症は、脳血管攣縮水頭症があります。

 

 

脳血管攣縮について

 

 

脳血管攣縮が生じてくる時期は5-14日後と幅広く、ピークは大体7-10日目くらいです。

 

脳血管攣縮は脳血管が縮んで脳の血流が不足する病気です。

脳血管の血流障害が生じることで、意識の低下(見当識障害)手足の動きが悪くなる(片麻痺)言葉が話しにくくなる(失語)といった症状が生じる事もあります。

 

脳血管攣縮とは

 

重症化すれば脳梗塞という脳の血流が一部なくなった状態となり、重度の障害が残る事や死亡する場合もあります。

 

 

水頭症について

 

 

水頭症はさらに遅れて発症1か月後くらいに起こりますが、くも膜下腔というスペースを充満する血液によって、脳脊髄液という液体の循環が悪くなって起こる疾患です。

 

具体的に循環が悪くなると、脳の中心にある脳室という部分に脳脊髄液が過剰に貯留することになります。

これによって起こる症状として一番多いのが、歩きにくくなる事(歩行障害)です。

さらに進行すると認知障害・失禁も生じてきます。

放置しても改善はしないため、脳室と腹腔を細いチューブでつないで、たまった脳脊髄液を腹腔に流す、脳室-腹腔シャント術という治療法が必要となります。

 

水頭症とは

 

また、くも膜下出血の合併症として気をつけなければならないのは肺炎心不全などの全身合併症であり、そのような疾患にも注意する必要があります。

 

 

術後の経過について

 

 

脳血管攣縮を起こさなければ、術後2週間程度で退院できることもありますが、軽度でも脳血管攣縮を起こしてしまうと、その経過を見て治療を行う必要があるため、通常の場合であれば発症後3週間、多くの場合は1か月以内位に退院できたら早いと考えてよいでしょう。

軽症の方であれば、脳血管攣縮の治療が終わり、発症1か月くらいで退院することができます。

これは治療法がクリッピング術であっても、コイル塞栓術であってもあまり変わりません。

 

また、脳血管攣縮の治療が終わって1か月の時点で何らかの神経症状がみられる方の場合には、回復期リハビリ病院にてさらなる本格的なリハビリテーションが必要となります。

その期間は重症度にもよりますが、通常の場合1-3か月は要することが多いです。

 

くも膜下出血の経過

 

 

 

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