海外渡航中・帰国後の病気への対応について

前回の動画では、海外渡航前の予防医療についてご紹介しました。
 海外渡航先の不慣れな環境で怪我や病気に遭ってしまうと、どう対処すればよいか分からず途方に暮れてしまうかもしれません。 起こり得るリスクを想定し、あらかじめ対処方法について知識を得ておくことは、大変重要なことだといえるでしょう。
 今回は、川崎医科大学 公衆衛生学の依田 健志先生に、海外渡航中・帰国後の病気への対応についてお話を伺いました。

 

渡航中の緊急対応

 

 

海外渡航中に怪我や急病に見舞われた際、現地の病院を突然受診しても受け付けてもらえない場合があるため、注意が必要です。

 

海外渡航前には不測の事態に備えて海外旅行傷害保険に入ることが勧められています。

保険の種類によっては受診できる病院が決められていることもあるため、現地で病院を受診したい場合は加入している海外旅行傷害保険のコールセンターへ連絡しましょう。

フリーダイヤルで繋がり、日本語で対応可能なスタッフがいる病院を案内してくれます。

現地に在住している日本人、あるいは日本人旅行者の多い国であれば、日本人専用のクリニックか、日本語が話せる医療従事者の勤務する病院が設置されており、スムーズに受診できる場合もあります。

 

また、持病をお持ちの方が海外へ長期間滞在する場合には、日本のかかりつけのクリニック英語で診断書を書いてもらっておくと安心です。

トラベルクリニックでも英語の診断書を発行することができるため、ワクチン接種や予防内服で受診する際に併せて相談しても良いでしょう。

 

受診は可能だとは言え、渡航先で体調を崩すのはなるべく避けたいものです。

不衛生なものの飲食や、現地の蚊や動物との接触は、お腹を下したり感染症に罹患したりするリスクになり得るため、そのような状況には注意して行動しましょう。

 

万が一、動物に嚙まれたり引っ掻かれたりした際には、すぐに海外旅行障害保険のコールセンターに連絡してください。

場合によっては、現地ですぐに暴露後予防接種として狂犬病の治療を受ける必要があります。

帰国時に治療・処置を受けている途中であれば、日本でもその後の治療を継続する必要があり、数回狂犬病ワクチンを接種しなければなりません。

帰国後すぐにトラベルクリニックに連絡し、どのように対処すれば良いか指示を仰いでください。

 

緊急時の備えとして、持病を持っている方、普段服用されている薬がある方は、それらが英語でどのように表記されるかメモを取っておくと安心です。

 

怪我・病気になった際に活用できる英会話・用語集は、ネット上で誰でも使用できる形で公開されています。

いざという時に、用語集Google翻訳などを駆使して、自分の症状を伝えられるよう、あらかじめ準備しておきましょう。

 

 

帰国後の対応について

 

 

帰国後に体調の異変に気付いた際には、我慢せずすぐに受診することが重要です。

海外渡航後には、日本にはない海外特有の疾患に罹患している可能性もあるため、受診前には病院に、自分がどこの国に、何日間どのような目的で滞在していたかという情報を、必ず伝えてください。

 

入国時には、医療従事者である検疫官が在中する検疫ブースが設けられており、健康相談をすることができます。

体調不良に関する情報は、隠してしまうと適切な治療が行えず命を落とすことにもつながりかねません。

他人に感染させるリスクもあるため、帰国時には包み隠さず本当のことをきちんと伝えることが大切です。

 

海外渡航時に感染する可能性のある病気は様々ありますが、特にA型肝炎・結核・梅毒・HIVなどは潜伏期間が長く、帰国後しばらくは注意が必要です。

A型肝炎が2~7週間、結核が1~2ヵ月と、帰国後数週間が経過してから発症するケースもあるため、1ヵ月前に滞在していた国、渡航の目的等は受診時病院に必ず伝えましょう。

梅毒・HIVは性行為による感染症で、潜伏期間が長いケースもあるため、症状が現れた際少なくとも帰国後半年程度までは、海外渡航していた旨を伝えるようにしましょう。

 

海外渡航に伴い、感染する可能性のある病気

 

 

 

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