間近に迫る心不全パンデミック、高齢化社会のリアルな現状

近年社会問題となっている「心不全パンデミック」ですが、どういったものなのか皆さんは御存じでしょうか? 心不全という病気自体はよく聞く名前ではありますが、実際にどういう病気でどんな治療法を行っていくのか知らない方も多いと思います。 今回はそんな心不全の治療法について、国立国際医療研究センター病院 循環器内科診療科長の廣井 透雄先生に解説していただきます。

 

心臓が悪くなる病気、心不全とは!?

 

 

「心不全」という病気は心臓の機能が悪くなり、全身に十分に血液を送り出す力が弱くなる病気です。

 

血液は全身を循環しますが、循環する場所は「肺」「肺以外の全身」に大きく分けることができます。

血液を送り出すことができなくなると、血管の中で血液が渋滞し「うっ血」という症状を引き起こしてしまいます。

この「うっ血」が肺の血管で起こると、肺の中に水が溜まってしまう「肺水腫」を合併し呼吸苦に陥ってしまいます。

肺以外の血管で起こった場合は、四肢の浮腫が起こります。

 

心不全が重症化してくると、循環による全身の臓器や組織への栄養や酸素を送るという役目が果たせなくなり、やがて亡くなってしまいます。

 

 

心不全はこれからもっと増加する?心不全パンデミックと日本の社会事情

 

 

心不全と診断され亡くなられる方は1995年で4万人程度でしたが、年数を重ねるごとに単調的に増加してきています。

これは、心不全という病気のメカニズムと日本が抱える高齢化社会という問題が非常に密接に関係しているからなのです。

 

心臓も臓器である以上、加齢と共に徐々に機能は衰えてきます。

高齢者が多い日本では、加齢による心臓の衰えを抱えてしまう患者がどうしても多くなってしまうのです。

 

そしてこれからも心不全患者はどんどん多くなっていき、心不全による死亡者はこれからも増加の一途をたどることが予想されています。

そして現在では、このような現象を「心不全パンデミック」と呼んでいます。

 

日本における心不全の死亡者数

 

 

心不全の原因について

 

 

心不全の原因として、加齢先天性の心疾患以外に狭心症や心筋梗塞といった心臓へ血流が十分いきわたらなくなってしまう病気からもなり得ます。

特に心筋梗塞は心臓に直接ダメージを与えてしまいます。

一度死んでしまった心臓の細胞は再生されず、生き残った細胞だけで循環を保たなくてはいけません。

この状態が心不全を起こしたり、元々あった心不全を悪化させてしまったりします。

 

 

心不全の治療、日頃のケアが大切

 

 

心不全治療では薬物治療がメインとなり、心保護効果が報告されている薬剤を併用しながら治療することになります。

 

他にも食生活を見直したり、運動療法を取り入れ、生活習慣を予防し心筋梗塞などの疾患になるリスクを下げることが治療への第一歩となります。

 

血管の弾力性を失わせる動脈硬化は心不全以外にも様々な循環器疾患になるリスクを高めます。

そしてこの動脈硬化は、糖尿病高血圧といった生活習慣病によって助長されるとされているため、生活習慣から見直していくことも大切です。

 

心不全の治療

 

 

 

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