心不全の種類と治療方針

心不全は多数の原因により引き起こされます。 それぞれの原因に対して、カテーテル治療や外科的治療、薬物療法など、さまざまな方法を組み合わせて治療を行うことが重要です。 今回は、心不全の原因や種類、それに応じた治療方針について、鳥取大学医学部 循環器・内分泌代謝内科学分野 衣笠 良治先生にお話を伺いました。

 

心不全の原因となる疾患とその治療法

 

 

心不全の原因となっている疾患が明らかな場合には、まずその疾患に対する治療を行う場合があります。

 

狭心症・心筋梗塞で、心臓の栄養血管である冠動脈が狭くなったり詰まったりしていると、心臓への血の巡りが悪くなって心臓の働きが弱くなってしまいます。

この場合、血の流れをせき止めている狭窄部分を広げるためのカテーテル治療や、心筋に血流が再開するよう新たな血液の通り道を外科的に作るバイパス手術といった治療法が選択されます。

 

弁の開閉がうまくいかず心臓の機能を障害する弁膜症に対しては、カテーテルあるいは開心術を用いて、自己の弁を人工弁に置換する治療を行います。

 

心臓の筋肉が何らかの原因により異常をきたし、心臓の働きを維持できなくなる心筋症という病気に対しては、主に薬物治療を中心として行います。

 

 

心不全の分類と薬物療法

 

 

続いて治療方針を決定する際に重要となるのが、心臓から全身に血液を送り出す最後の部屋である、左心室の機能です。

左室駆出率(EF)という、心臓の動きがどの程度かを数値化した指標があり、正常値は55〜70%程度とされています。

左室駆出率が低下している心不全を、Heart failure with reduced ejection fraction(HFrEF ヘフレフ)と言います。

β遮断薬サクビトリルバルサルタンミネラルコルチコイド受容体拮抗薬SGLT2阻害薬という4つの薬が、心臓の動きが非常に悪いタイプの心不全の悪化を予防し、寿命を伸ばしてくれることがわかっており、現在の標準的な治療と言われています。

 

一方、一見すると左室駆出率は保たれており心臓の動きはそれほど悪くない心不全を、Heart failure with preserved ejection fraction(HEpEF ヘフペフ)と言います。

なかなか治療法が確立されていませんでしたが、元々は糖尿病の治療薬として開発されたSGLT2阻害薬という薬が心不全にも有効であることが分かり、治療に使用されています。

 

以上のように、まずは心不全の原因をしっかり評価しそれに応じた治療を行うこと、心臓の働きに応じて薬の選択を考えることが、基本的な心不全治療の流れとなります。

 

 

薬物療法以外の治療法

 

 

心不全の患者さんは、心臓を動かす電気伝導系の回路にも異常が見られる場合があり、CRT-Dという心不全専用のペースメーカーを植えこむ治療法が適応となることがあります。

 

また、心不全の患者さんはあまり運動してはいけないと勘違いされていることがありますが、適度な運動であれば、実施した方が心不全の悪化を抑制できたり、寿命が伸びるとも言われています。

運動療法を行うための心臓リハビリテーションも重要な治療となるのです。

 

薬物療法だけでなく様々な治療を組み合わせることが、最近の心不全治療の流れとなっています。

 

 

 

本サイトの利用にあたっては、当社の定める利用規約が適用されます。利用規約はこちらからご確認ください。