内視鏡のメリットは、その症状が出現したときに病気の確定診断ができることです。
実際に胸焼けやつかえ感、胃もたれなど、患者さんの煩わしい症状が本当に逆流性食道炎からなのかは、見てみないとわかりません。ときには、食道がん、胃がん、胃潰瘍といった他の病気が隠れていることもあります。なので、まず内視鏡で見て、他の疾患がないとルールアウト(除外診断)することは非常に重要だと思います。
内視鏡の、いわゆる重症度分類と症状が一致するなら、逆流性食道炎の内視鏡診療においては、内視鏡医からすると嬉しいのですが、現状では必ずしも一致しません。ただ、やはり内視鏡で見る一番の大きなメリットは、他の疾患をしっかりと除外診断し、患者さんにこれは酸をしっかりと抑制することで症状がとれる、悪い病気じゃないのだ、と安心をしていただくことだと思います。
内視鏡の技術が向上して、いわゆる診断率が上がる疾患と、逆に下がる疾患がありますが、逆流性食道炎ではその診断の分類というか、新しい技術を導入することによってどういうふうに診断を確定したらいいかはまだ決まっていません。
逆に言うと新しい技術を使うことによって迷ってしまい、診断率は下がるというのが我々の予想です。今後、診断学が確立することによって、もう少し、より症状とリンクする内視鏡診断ができるようになる可能性はあるのでは、と思っています。
逆流性食道炎の原因である胃酸を分泌抑制する、というのが一番の一般的な治療法です。PPI(プロトンポンプ阻害剤)か、もしくはボノプラザンというもう少し新しい、強力に酸を分泌抑制する薬物が多く用いられています。
ただ逆流性食道炎というのは、酸逆流と、知覚過敏、いわゆる患者さんの受け止めが、症状に対してミックスしている病態になります。そのため、100%酸を抑制すれば全ての患者さんの症状が取れるわけではない、ということになります。
日常診療では、その他の薬剤、例えば、漢方や消化管運動機能調整薬、場合によっては抗不安薬のようなお薬も使うということが、広く行われています。ただその中でも、やはりキードラッグになってくるのは酸分泌抑制薬と、いうのは、間違いないかなと思っています。