本来出るべき糞便が、腸管内にとどまってしまい、いきみや便が残っている感じ(残便感)があることで、患者さんのQOL(生活の質)が損なわれる、それを慢性便秘症といいます。
「1日1回でなければ私は便秘です」という個人で感じるものではなく、いきむ、残便感がある、排便困難感があるということで、日常生活に支障をきたしたり、生活の質が妨げられているのが慢性便秘症、と定義できます。
お腹の張りとか違和感が多いと思います。特に痛みを訴える方もいらっしゃいます。便をするとき、(長時間)トイレにこもるという患者さんもいますので、そのような状態の時は、慢性便秘症の可能性があります。
慢性便秘症は若い女性の病気と捉えられがちです。実際に若いときには女性の方が多い傾向にあるますが、60、70代になってくると、男性の頻度が急激に増えてきます。80代ぐらいになると、男女比はほぼゼロになります。
高齢になればなるほど男性が多いですから、慢性便秘症になった男性の患者さんは、失意を感じたり、自分の健康に対して非常に不安を覚える方もいます。検査の後になるとは思いますが、そうしたことを理解してもらうことも重要です。
精神科の病気もしくは神経の病気(パーキンソン病のような)、甲状腺機能低下症といった基礎疾患がある患者さんもいます。例えば、パーキンソン病は便秘を最初の症状として発症する、といった報告もあるので、いろいろな疾患が隠れている可能性を考えて内科を受診するのが、重要と考えます。大腸がんによって、詰まってしまう、結果便秘になるというような、いわゆる排便習慣が変わるということもありますので、一度受診をお勧めします。
一番初めに、問診、患者さんに話をお聞きするのが重要です。糖尿病、甲状腺機能低下症、様々な神経疾患、そうした病気がないか、その後に診察触診をすることです。お腹の張りがないか、例えば腹痛圧痛がないか、腫瘤に蝕らないか、を診ます。
その後に腹部のレントゲン、こちらは非常に重要です。例えば腸管内のガス像の分布に異常がないかをまずチェックします。
その次に重要なことは症状の出現の仕方です。例えば急激な排便習慣の変化は、注意を要する場合があります。
そして大体6ヶ月に3キロ以上出るような体重の減少、何か大腸がんみたいなものが隠れていないかということを見る必要があります。また、排便習慣の変化とともに血便、便の色が変わるということも非常に重要になってきます。
こうした警告症状と言われるようなものがあるときには、しっかりと画像検査をするのが重要ですし、ときには貧血がないか、炎症反応の上昇がないかということも見る必要があります。