大腸憩室とは、大腸内腔から外に小部屋のような形で圧迫されて出てきている物のことを言います。
先天性と後天的にでてくるものがあります。欧米風の食生活や過度な便秘も大腸憩室に関連があるといわれています。
大腸憩室は人種差があると言われていて、日本人の方がどちらかというと少なく、欧米人の方が多い、60歳ぐらいの欧米人での保有率が50%を超えるというデータがあります。
日本人では、我々の日常診療の感覚からすると、3割以上の患者さんが大腸憩室を保有していると言えますし、近年は増えているというのが一つの特徴です。
症状として非常に特徴的なのが、無痛性の急性の出血(血便)です。逆に言うと、お腹が痛い、もしくは発熱している、という患者さんは、大腸憩室出血以外の出血ということを考える必要があります。
大腸憩室で一番危険因子としてよく言われているものは抗血栓療法、いわゆる血をサラサラにする、そういう薬です。アスピリン、チエノピリジン系という薬剤が憩室にとって良くないという報告があります。それで出血をきたすというわけではないですが、抗凝固療法で使われる、ワーファリンやDOACと言った血液をサラサラにする薬というのは、少量の出血でもそのあと大量になってしまう可能性がありますので、一つの危険因子であると考えます。
まずは、患者さんの話を聞くことが重要です。痛みがなくて発熱もない、そして急激に大量の血便であるとなった場合には、大腸憩室出血を疑います。便の色は、非常に重要で、例えば黒っぽいものが少し混じるという場合には、十二指腸潰瘍や胃潰瘍といったものによる、上部消化管出血からの流出という可能性もゼロではなくなります。
そうした場合には、胃カメラ(上部消化管内視鏡)を最初にやるという選択肢が出てきます。
その次に、重要になってくることはバイタルサイン、いわゆる血圧・脈拍となります。脈が速くて、そして血圧が低めであるという場合、造影CTを行うことが非常に重要です。
造影剤を流した後にCTを取り、その造影剤が消化管の外に流出しているextravasation(造影剤流出)いう所見があるかないか、そしてその場所がどこか、ということが、次のポイントとしては重要です。
そしてこのextrabasation、いわゆるかなり大量に造影剤が消化管から漏れている、という所見がある場合には、基本的には内視鏡検査を行うことが多いです。
ただ状態によっては、例えばその量があまりに大量であるという場合、血管造影と言って、血管の中に造影剤を流すという検査に入る、そうした可能性もありうります。