成人になると、多くの女性が性交渉によってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することが分かっています。
その中でも特に子宮頸がんの発がんとの関係が深いことが分かっているのは16型と18型のHPVです。
このウイルスの「感染を予防」するワクチンとして、HPVワクチンがあります。
現在、日本では2価と4価のワクチンが定期接種(公費補助有り)の対象となっており、2価ワクチンは16型・18型に対応、4価ワクチンは2価に加えて尖圭コンジローマの原因となる6型・11型HPVの感染も予防します。
2価も4価も16型と18型のHPVによる子宮頸がんを予防し、その効果は性交渉開始前であれば100%に近い感染予防効果が証明されています。
多くの国では9~14歳の間に2回接種が実施されており、WHOもこれを推奨しています。また、米国ではすでに9価ワクチン(子宮頸がんの90%以上を予防する効果がある)を男女両方に対して定期接種化しています。
実際のワクチンの抗体価や感染予防効果が何年程度持続するのかについては、まだはっきりと明らかになっていませんが、10年以上の効果持続は確実であり、現在は毎年その効果が長くなっていることが証明されている段階です。
HPVワクチンの副作用には、機能性身体症状や慢性疼痛症候群、起立性調節障害などの疾患が関わっていると言われています。慢性疲労症候群と呼ばれる病態でも似たような症状が観察されることがあります。
最近では、認知行動療法と呼ばれる治療法が非常に有効であると言われています。
日本医学会は「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」と呼ばれるガイドラインを発行しており、これはインターネット上でも全文を読むことが出来ます。
現在、日本のHPVワクチン接種者の数は低迷しています。しかし、今後副反応についての世間の理解が深まることで、接種数は増加していくことも考えられます。
接種者が増えると、似た症状を訴える人は一定頻度で必ず現れると考えられます。
この時、重要なのは初期対応であり、日本医学会によるガイドラインは必要とされる手引きとなります。
各国のHPVワクチンプログラムの接種率を見ると、日本の接種率はほぼ0%となっています。
一方、ルワンダやブータン、マレーシアといったいわゆる開発途上国であっても、国の主導によって高い接種率を達成している国もあります。
接種率はほぼ0%となっている日本ですが、現在も定期接種として、小学校6年生から高校1年生まで、無料でHPVワクチンの接種を受けることが出来ます。
接種を考えている人は、事前に自治体に相談した後、ワクチンを受けたい医療機関に連絡して、確認してから受診すると良いでしょう。
世界中が現在取り組んでいる子宮頸がん予防の目指す所は、子宮頸がんの根絶です。
ところが、日本では全く成果を出せていません。その大きな理由としては、行政・研究者(専門家)と、一般市民との間で、意識や知識の乖離があることが挙げられます。
これからは、定期的ながん検診の重要性も含めて、世界のHPVワクチン接種状況を踏まえた上で、どのようにして子宮頸がんを予防できるのかを考えていくことが重要です。
その為にはまず、学校でのがん教育が重要となります。
また、ワクチンの高い接種率と、がん検診の高い受診率の両方を成し遂げることができれば、子宮頸がんの患者さんは確実に減っていくと考えられます。
現在、各国から報告されているHPVワクチンや子宮頸がんに関する重要論文を、一般市民にも分かりやすく読めるように紹介するサイトとして、「YOKOHAMA HPV PROJECT」が制作されています。
是非、男女ともに、様々な年代の人に読んでいただきたいと思います。