世界各国と日本のHPVワクチン接種状況

ヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされる、子宮頸がん。 HPVワクチンを接種することによって高い予防効果がありますが、日本での接種率は依然低く、世界の先進国に大きく後れをとっています。 今回は、世界各国と日本のHPVワクチン接種状況について、横浜市立大学 産婦人科学教室 宮城 悦子先生にお話を伺いました。

 

 

HPVワクチンの世界各国における接種状況

 

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは、性交渉経験があれば誰でも当たり前に感染するウイルスです。

症状は出ないため感染しても気付かないまま生活している方が多く、自然に排除される場合がほとんどです。

 

しかしウイルスの種類や感染部位、宿主となる個人の免疫力などによっては、がんを引き起こす場合があります。

 

このウイルスによって引き起こされるがんとして代表的なのが、女性の子宮頸がんです。

近年は若い女性の子宮頸がん罹患が増えており、問題になっています。

 

HPVの感染によるがんの発症を予防するのが、HPVワクチンです。

WHO(世界保健機関)は、15歳までに90%の女性がHPVワクチンを接種すべきであると推奨しており、世界各国での接種率は着々と上昇、すでに80%以上の接種率を達成している国もあります。

 

各国の15歳までの女児のHPVワクチンの接種率の現状

 

HPVは子宮頸がん以外に、中咽頭がん・肛門がん・陰茎がんなどのリスク因子でもあります。

これらを予防するためにも、男女区別のない接種が広く進められている状況です。

 

 

HPVワクチンの日本での接種状況

 

 

一方、日本では2013年にメディアで、HPVワクチン接種後の女性から副反応とされる症状が多数報告されたと大きく取り上げられました。

その影響で、以降HPVワクチンの接種率はほぼ0%まで低下していましたが、厚生労働省は2020年10月と2021年1月に、中学1年生から高校1年生までは定期接種として無料で接種できると再通知しています。

2022年からは積極的接種勧奨が再開され、対象者にHPVワクチンの効果や安全性について記載されたリーフレットが届くようになり、加えて17歳から25歳までの女性無料接種の対象となります。

 

中学1年生から高校1年生の定期接種対象者には、自治体から自宅に接種券が送られてきます。

17歳から25歳の対象者については、自治体によって接種券の準備方法が異なり遅れて発送される場合もあるため、接種を希望する場合には、ワクチン接種を担当している窓口に直接問い合わせるのが確実です。

 

HPVワクチンの最近の動きについて

 

 

HPVワクチン普及への取り組み

 

宮城先生は、日本ではHPVワクチンの世界情勢を知る機会が少ないことを危惧され、様々な年代の男女にHPVについて関心を持ってもらうこと、最新の情報を提供することを目標に、YOKOHAMA HPV PROJECTを立ち上げられました。

プロジェクトのサイトでは、国内外のHPVワクチンに関連する論文や情報が平易な言葉で分かりやすく解説されており、海外でのHPVワクチンのエビデンスや、2013年に日本で報道されていた症状はHPVワクチンの接種の有無に関わらず起こり得るということなどについて、情報発信が行われています。

 

宮城先生は、子宮頸がんという病気、予防の大切さに関する理解を広めていくことで、HPVワクチン接種の普及へ繋げていきたいと仰っています。

 

 

 

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