子宮体がんの日本の罹患数は近年増加しています。
昭和60年ごろは、同じ子宮から発生するがんの子宮頸がんの方が罹患数は多く、子宮体がんは子宮頸がんの罹患数の2割程度でしかありませんでした。
しかし、2000年に入ってからは子宮体がんと子宮頸がんの罹患数はほとんど同じとなり、現在では子宮体がんの罹患数の方が多くなっています。
欧米では昔から子宮頸がんよりも子宮体がんの方が多く、日本で子宮体がんの罹患数が増加した背景には、食生活の欧米化の影響があるとされています。
子宮体がんは子宮頸がんよりも症状が出やすく、主にみられる症状は不正性器出血です。
子宮体がんは年齢を重ねた方で発症しやすく、閉経後に子宮からの不正出血があって気づくケースが多いです。生理時の出血以外の出血がみられる場合には、子宮体がんの検査を受ける必要があります。
不正性器出血以外の症状では、水っぽいおりものがみられる場合も要注意です。検診で超音波検査を受けた際に、子宮内膜が厚いことで子宮体がんが発見されるケースもあります。
子宮体がんの確実な診断方法は、子宮内膜の組織診断です。
子宮内膜は神経が多く、検査の際の痛みが強いので、麻酔をかけたうえで内膜全部をとる全面掻爬をして組織を調べます。
1回の検査では病巣をとらえきれないこともあるため、検査で異常が出なくても症状を繰り返す場合には、検査を何回か行うことが大切です。
子宮体がんの主体となる治療法は手術で、手術がいちばん大事です。
手術で取らなければいけない臓器は、子宮・卵巣・卵管です。
がんが広まりやすいリンパ節は決まっていて、所属リンパ節と呼ばれます。所属リンパ節も臓器と一緒に手術で取ります。
子宮体がんの進行度は、がんの大きさや子宮筋層内へのがんの浸潤、リンパ節や遠いところにある臓器への転移の状態によってⅠ期からⅣ期に分類されます。
Ⅰ期はがんが子宮体部のみのもので子宮筋層への浸潤の程度によってⅠA、ⅠBに分けられます。
Ⅱ期はがんが子宮体部を越えて子宮頸部に広がっていますが、子宮のみでとどまっているものです。
Ⅲ期はがんが子宮外に広がっているけれども骨盤内にとどまっているもの、または骨盤内、あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移している状態で、がんの拡がりや転移の状態によってⅢA、ⅢB、ⅢC1、ⅢC2に分けられます。
Ⅳ期は、がんが骨盤を越えて広がっているもの、または膀胱、腸の粘膜まで浸潤しているもの、遠いところの臓器に転移しているもので、がんの広がりや浸潤、転移の状態によってⅣA、ⅣBに分けられます。
手術では、Ⅲ期、Ⅳ期といったがんが子宮外に広がっている場合やほかの臓器に転移している場合でも、できるだけがんの組織は取った方がよいとされており、Ⅳ期では子宮以外の他の臓器を含めて取ることもあります。
手術で取るべきものをとって検査をすることで再発リスクがわかります。
その再発リスクに応じて、手術後は主に抗がん剤治療を行います。まだ20代の若い人や子供を産みたいという希望がある人で、非常に悪性度が低い場合はホルモン剤での治療が可能です。
子宮体がんの転移は子宮に隣接する臓器への転移と遠いところにある臓器への転移があります。近くにある臓器への転移では、子宮の外に飛び出したがんが膀胱や直腸に潜り込んでいきます。
遠いところにある臓器への転移は、背骨に沿って上がっていき、胸や首のリンパ節までいきます。血液の流れにがんがのっていくので、肝臓や肺にも転移が起こります。