子宮頸がんの治療は手術や放射線治療などがあり、手術の場合は、がんの進行度や病状、年齢、合併症などによって手術方法が選択されます。
子宮筋腫などの良性疾患でも行われる子宮を切除する手術は単純子宮全摘術といいます。
単純子宮全摘術の適応となる状態よりも、がんがやや進行している場合には、膣壁を多く切除することや、子宮に付いている靭帯も含めて子宮を広く切除する広汎子宮全摘術が選択されます。
腹腔鏡下での広汎子宮全摘術は、従来の開腹術よりも低侵襲で行うことができ、身体への負担が少ない手術です。腹腔鏡下の広汎子宮全摘術の適用は、がんの進行度を表すステージに応じて選択されます。子宮頸がんのステージは、0期からⅣ期に分類されており、それぞれのステージで、浸潤の程度によってⅠA期、ⅠB期のようにAとBに分けられます。さらに、がんの大きさによってⅠA-2期、ⅠB-1期のように1と2に分けられます。
腹腔鏡下での広汎子宮全摘術はIA-2期、ⅠB-1期、ⅡA-1期のステージのがんに適用されます。
・IA-2期
子宮頸部の組織にとどまっており、腫瘍の大きさはそれほど大きくはありませんが、基底膜を破ってがんが3mm~5mm以内浸潤しており、拡がりが7mm以内のがんです。
・ⅠB-1期
子宮頸部にとどまっており、浸潤の深さは5mm以上、拡がりは7mm以上です。がんの大きさは4㎝以内でⅠBの中でも腫瘍の大きさがいちばん小さいがんです。
・ⅡA-1期
子宮頸部を越えて膣にも少し浸潤していますが、腫瘍の大きさは小さく2㎝以下のがんです。
腹腔鏡下の広汎子宮全摘術のメリットと合併症について説明します。
・カメラにより拡大視できるので骨盤の深いところまでよく見える
・腹部に炭酸ガスを入れて手術を行うため、静脈が圧迫され、出血量が圧倒的に少ない
・出血量が少なく手術部位をきれいに保てるため、合併症を起こすリスクが少ない
術中の合併症としては、尿管や膀胱などの損傷があります。術後の合併症としては、尿管側から尿が漏れ、膣の方に出てくる尿管膣瘻・膀胱膣瘻や腸閉塞がみられる場合があります。
術後の合併症を防ぐために、できるだけ自律神経を温存する手術が行われます。手術後の平均入院期間は6日間程度で、手術後に尿が出にくい場合には、泌尿器科で自己導尿の指導を受けてから退院となります。
腹腔鏡下の広汎子宮全摘術やロボット手術は比較的新しい手術です。
外国では従来の開腹術に比べて再発率がやや高いというデータがあります。
子宮頸がんは予防が可能ながんであるため、しっかりと検診を受け、予防を行うことが大切です。子宮頸がんの治療は、手術か放射線治療を最終的に選択することとなります。ある程度、自分でも知識を持ったうえで、専門医によく相談し、判断されることがおすすめです。