子宮がんのロボット支援下手術の適応とは:保険適用はあるのか?

低侵襲
ロボット手術
子宮がんはがん検診の一つになっている疾患で、近年検診の普及により、早期発見・早期治療開始が可能になっています。早期に治療を開始すれば、子宮は温存することが出来ます。 子宮がんの治療法にはホルモン療法や放射線療法、レーザー治療など様々ですが、今回は子宮体がん・子宮頸がんの切除術において適応があるロボット支援下手術の、具体的な適応症例や保険適用の範囲について、鹿児島大学病院・産科/婦人科の小林 裕明先生に教えていただきました。

 

子宮体がんにおけるロボット支援下手術の適応:高リスク/低リスクともに適応

 

 

婦人科で扱う3大がんとロボット支援下手術の適応

 

 

浸潤が壁に達していない、危険度の低い子宮体がん(低リスク体がん)の場合、広汎性に拡がった子宮がんと違って、腟靭帯を切除しない手術方式をとります。

 

このような切除の方法を「単純子宮全摘出術」と言います。

子宮体がんの場合、卵巣・卵管が病巣のすぐ近くにあるため、子宮だけでなく両方の卵巣・卵管も摘出します。さらに、子宮周囲の骨盤内部リンパ節も切除します。

このようにがんの病巣周囲のリンパ節を全て切除する術式「リンパ節郭清」と呼ばれます。これは、病巣からリンパ節への転移、リンパ節から全身臓器への転移を防ぐため、がんの切除術では一般的に行われる術式です。

 

 

高リスクな子宮体がんのケースでは、転移のリスクがより大きくなるため、子宮周辺だけでなく、傍大動脈リンパ節も郭清し、がん細胞の拡散を防ぎます。

時に、腫瘍の組織の状態で分類した時に悪性度の高いタイプの子宮体がんは、卵巣がんのように卵管から腹腔内へと拡がる場合があります。

このようながんの拡がりを「播種」といい、がん細胞が腹腔内へ散らばるイメージでがんが転移していきます。

 

 

大網切除について

 

 

この場合、胃から垂れ下がっている脂肪組織である「大網」も同時に切除するべきだと言われています。大網は脂肪組織の塊で、腹腔臓器を覆っているカバーのような組織です。

リンパ節を多く含んでいるため、リンパ節転移のリスクを未然に防ぐために、摘出が適当であるとされています。

 

 

今までに様々な臨床試験が行われてきた結果、腹腔鏡下の手術よりもロボット支援下手術の方が治療成績は良いとされたのが子宮体がん手術です。

特に肥満・高齢の患者にとっては手術の成績よりも術後の合併症等のリスクが少ないという点で優れた術式となっています。

 

 

ロボット手術の保険適用範囲とは:子宮体がんの保険適用は低リスク群と良性子宮腫瘍のみ!高リスク群への早期適用が望まれる

 

 

子宮体がんのロボット支援下手術 保険適応まとめ

 

 

2018年4月から子宮体がんの中でも危険度の小さい、すなわち、がん細胞が子宮壁の中にまで浸潤していないタイプに対して、ロボット手術が保険適応されるようになりました。

また、がんではない良性の子宮腫瘍に対してもロボット手術が保険適用の治療となっています。

つまり、子宮体がんの中でも、骨盤のリンパ節だけを摘出する、危険度の低い低リスク体がんが保険適用となっており、高リスクな子宮体がんのケースでは、まだ保険適用されておらず、完全に私費による治療となります。保険についても先進医療特約の適用範囲ではありません。

 

 

高リスク子宮体がんの手術範囲のイメージ図

 

 

高リスク子宮体がんの場合、鳩尾付近の傍大動脈リンパ節を摘出したり、場合によっては大網を切除する必要があり、大掛かりな手術となります。

この場合上腹部・下腹部の両方からアプローチする手術となり、これを「デュアル・ドッキング手術」と言います。実際、この手術方式は患者にとって恩恵の大きい手術方法であるため、出来るだけ早く保険適用が認められてほしい領域です。

 

 

子宮頸がんのロボット支援下手術 保険適応まとめ

 

 

また、子宮がんの中でも子宮頸がんのロボット支援下における広汎子宮全摘術は先進医療であり、国内では十数施設でしか受けることの出来ない治療となっています。

患者が先進医療特約の付帯した医療保険を契約していない場合、入院費用は保険で賄われますが、手術料が別途必要になります。この手術料は約135万円です。

 

さらに、子宮頸がんの手術には、子宮全摘ではなく、将来の妊娠可能性を保持したままがんを切除する「広汎子宮頸部摘出術」という術式があります。

これをロボット支援下で行う治療は全く保険が認められておらず、入院費用から手術費用まで全額が患者負担となり、約100万円の費用がかかります。

 

 

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