膵臓は、身体の深部に存在するため、発症しても初期における症状が非常に少なく、かなり進行してから初めて症状が出てくるケースがほとんどです。主な症状としては、腹痛、背中の痛み、食欲不振、体重減少、黄疸などが見られます。
現在、胃がんなどとは違って、膵臓がんを対象としたがん検診などは実施されていないため、定期検診などで発見されることもほとんどなく、初期段階で発見することは非常に困難です。
気になる症状があれば、まずは専門医のいる病院を受診しましょう。
膵臓がんの危険因子としてあげられるのが、慢性膵炎や糖尿病にかかっていること、血縁のある家族内に膵臓がんになった人がいること、肥満、喫煙などです。
近親者に膵臓がんの患者がいる場合には、4~6倍程度高いリスクで膵臓がんを発症します。
また、糖尿病の患者や喫煙歴のある人であれば、2~3倍の発症リスクがあります。
特に、これまでに血糖値の異常が特に無かったにも関わらず急に高血糖になったり、糖尿病患者であれば、血糖コントロールが急激に悪くなった場合には、膵臓がんの疑いを持つ必要があります。
さらに、慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の患者の場合では、膵臓がんの発症リスクが10~20倍にもなります。
このため、これらの疾患の患者では、治療過程で経過観察を行う際に、膵臓がんについても注意を払う必要があります。
膵臓がんが疑われる場合には血液検査を行い、血液中の腫瘍マーカーであるCEA・CA19-9などを測定することで、膵臓がんの検査を行います。
これらの物質が血中に高値で存在すれば、膵臓がんの疑いが強いということを意味します。
また、腹部の超音波検査によっても、ある程度のスクリーニングが可能です。
ここで、膵管の拡張や腫瘍性病変が有るかどうかを確認します。
これらの初期検査で異常が認められた場合には精密検査を行います。
精密検査では、造影剤を注入して行うCT、次にMRIやMRCT、さらに必要に応じてPET-CTといった撮影を行い、臓器の状態を詳細にチェックしていきます。
膵臓がんの治療は外科的切除、化学療法、放射線治療が中心的です。
この中でも根治的な治療が期待できるのは外科的切除です。
このため、診断の段階で、切除可能な膵がんであるか、切除不能なのか、それともその境界にあるがんなのかを判断します。
膵臓に近接している重要な血管として、腹腔動脈・上腸間膜動脈、門脈の3つがあります。
これらの血管にどの程度、がんが浸潤しているかによって局所におけるがんの進行度合いを判断します。
血管への浸潤状態や腫瘍の大きさなどを総合的に診て「切除可能な膵がんである」と判断された場合には、外科的切除が優先して行われます。
また、切除可能境界膵がん、切除不能膵がんの場合には、化学療法や放射線療法を行うことになります。
最近では、非常に治療効果の高い抗がん剤や分子標的治療薬が開発されており、これらの薬剤の投与によって腫瘍が小さくなり切除可能になれば、手術を行うことも可能です。