すい臓がん特有の症状は、ほとんどありません。
また、すい臓は体の奥にあり、内視鏡で診られないため、早期発見が難しい現実があります。
そのため、一般の方もご存じのとおり、すい臓がんの予後(経過)は厳しく、5年生存率は、がんセンターの統計でも約7%と、他のがんに比べて非常に低くなっています。
その理由は、手術ができる時期に見つかることが少ないからです。
また、すい臓のすぐ近くには血管や神経などが走っていて、なおかつ、すい臓の外側には「漿膜」というバリアがありません。
そのため、がんが1.5センチを超えると、すい臓の外に浸潤していきやすく、手術が難しいことも、すい臓がんの予後が悪い要因の一つです。
すい臓がんを手術で切除できるかどうか、その第一の条件は、遠隔転移がないことです。
つまり、肝転移や腹膜播種、あるいは遠くのリンパ節などに転移がないことが条件です。
また、すい臓の近くの主要な脈管、具体的には「総肝動脈」や「上腸肝脈動脈」などにがんが浸潤していないことも条件になります。
すい臓がんの手術の方法は、主に2通りあります。
膵臓の“頭”を切除するか、“後ろ”を切除するかの2つで、すい臓の頭を切除するのが「膵頭十二指腸切除術」、後ろを切除するのが「膵体尾部切除術」です。
膵頭部には胆管や十二指腸がくっついているため、膵頭部を切除すると、胆管や十二指腸も切れてしまいます。
また、がんの位置によっては胃の一部も切除しなければいけないため、がんを取り除いたあとに、胆管、すい臓、胃袋をつなぎ直す「再建」が必要です。
そのため、手術は非常に複雑で、8時間ほどかかります。
一方、膵体尾部切除術は、切除のみで再建は必要ないため、5時間ほどで終わります。
すい臓がんの手術のほとんどが、これら2つで行われます。
そのほか、稀に、割合としては1割未満ですが、すい臓全体を切除する「膵全摘術」もあります。
先ほど、手術で切除可能かどうかを分ける条件として2点挙げました。
そのうちの「遠隔転移」については、技術ではどうにもしがたいのですが、「主要な脈管に近い、または浸潤しているがん」の場合には、すい臓の真ん中を走る門脈も一緒に切除してつなぐことで手術を行えるケースもあります。
ただし、それが可能かどうかの判断は、外科医の経験や技術にも左右されるため病院によって異なります。
また、ここ数年の間で、すい臓がんに対する化学療法(抗がん剤治療)も進化しました。
その結果、手術ができるかどうかのボーダーラインのすい臓がんに対して、手術前に化学療法を行うことで、がんを縮小させてから手術を行う方法も普及してきました。
長期的な治療成績が出るのはこれからですが、これまでよりも治療成績が良くなるのではないかと期待されています。