子宮頸がんに対する腹腔鏡手術は、1992年に開始されました。
手術にかかる入院費の多くは保険で賄われますが、実際の手術にかかる費用は私費です。
施設にもよりますが、患者負担は50~100万程度になる手術です。
この手術はまだ開始されてからの年月が短く先進医療の部類に入りますが、導入されたからといって、全ての子宮頸がんの患者に対して腹腔鏡手術を行うようになるわけではありません。
子宮頸がんに対する腹腔鏡手術は2018年4月から保険適用になり、手術件数はこれから増えると考えられています。
小林先生のおられる大阪大学付属病院では、導入時期に3分の1程度の症例で、現在では半分以上で腹腔鏡手術を行なっているといいます。
過去の報告では、がんの治療にあたってその予後を比較すると、開腹手術を行なった症例と腹腔鏡手術を行なった症例では、大きな差が無いとされてきた疾患がほとんどであり、多くの医師たちはその結果に基づいて、より侵襲度が低く身体的負担の少ない腹腔鏡手術を選択してきました。
しかし、2018年11月、イギリスの高名な医学雑誌であるThe New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された論文の中で、腹腔鏡手術と開腹手術の予後を長期間に渡って比較した大規模試験の結果が報告されました。
そこでは、開腹手術と腹腔鏡手術の治療成績を比較すると、腹腔鏡手術の方が治療成績が劣っているという結果が報告されたのです。
この結果は、多くの産婦人科医にとって衝撃的であり、重く受け止められています。
これを元に、日本で保険適用されて本格的に運用が開始された腹腔鏡手術の手技について、検証する必要が出てきました。
子宮頸がんの患者に対して妊孕性温存手術(妊娠の機能を損なわないようにする手術様式)を行う場合、一般的には、脈管侵襲のある一部のⅠA-Ⅰ期、ⅠA-Ⅱ期から腫瘍径の比較的小さいⅠB-Ⅰ期が適用されるケースが多いようです。
多くの施設で「腫瘍径が小さい」とされるのは、腫瘍の大きさが2cm以下となっています。
子宮頸がんの腹腔鏡手術治療における病院選びのポイント:内視鏡の技術認定医のいる施設を探す
腹腔鏡手術での子宮頸がんの治療を希望する場合は、婦人科医師の中でも、内視鏡の技術認定医や婦人科腫瘍専門医の資格を持っている医師がいる施設を選ぶのがポイントとなります。
このような資格を持った医師のいる施設は、一定以上のレベルの手術を行える設備と、実績を持っていることが多いため、病院選びの際の一つの目安となります。
婦人科の医師である小林先生は、子宮頸がんの患者を治療するにあたって、精密検査の段階でリンパ節の状況(転移をしている可能性がないかどうかなど)や腫瘍の大きさをよく診察して、手術後も追加の治療が必要になる可能性を見極めているといいます。
そのような可能性のある患者に対しては十分な説明を行い、患者が主体的に治療法を選択して、納得のいく治療が行えるように努められています。
子宮頸がんに対する腹腔鏡手術では特に、「腹腔鏡手術を行ったから何かが足りない、問題がある」といったケースが無いようにしなければなりません。
侵襲度が低いため、身体に残る傷が小さく、美容面でも優れているという点では、特に若い患者にとって魅力的な手術でありますが、手術痕が綺麗であっても腹部の中の治療がおざなりになっては本末転倒です。
小林先生が手術を行う際には、開腹手術で行なっているステップを守ることで、腹腔鏡手術でも開腹手術に劣らないような治療ができるように努めているということです。