【目次】
00:30~ 進行大腸がんについて
01:37~ 進行がんの転移とその治療
04:53~ 大腸がん手術の難易度
08:01~ 直腸がんの特徴と懸念(肛門の温存)
17:22~ ロボット手術
20:23~ 5G時代の手術(通信技術とロボット技術の革新)
大腸がんに限りませんが、がんの発見は早ければ早いほど良いとされています。しかし、依然として進行した状態で見つかる人は少なくありません。
進行大腸がんの形には4つのタイプがあります。1型~4型まであり、最も多いのが2型の「潰瘍限局型」と言われています。
これがより進行すると、腸が詰まって、出血も起こってきます。手術が必要になりますから、ここに至る前に、受診することが重要です。
進行がんになると
大腸がんの転移は多くの患者さんの懸念事項です。がんの周囲のリンパ節転移、肺・肝転移、腹膜転移などがあります。
転移が起こると、腸の病変部分のみを切除しても、完全に治療することはできません。
したがって、リンパ節転移の段階で発見することで、がんを取り切る可能性が高くなります。
ただ、他臓器への浸潤や肝臓への転移があった場合に根治が不可能なのかというと、そうではありません。昨今はこのような進行がんであっても、合併切除手術によって生存率は高まります。
また、さらに肺転移などがある切除不可能な進行大腸がんに対しても、まずは化学療法を行うことで、がんの大きさや数を少なくしていくことができます。そこから切除術を選択肢に入れることが可能になります。
また、再発、再再発の時のことを考えて、切除する時は、腹腔鏡を利用した手術で低侵襲な治療を行なっています。
同じ大腸癌でも、部位によって難易度は異なります。
上行結腸であれば、進行がんであっても、3cm程度の1つの孔をあけることで腹腔鏡手術が可能となっています。これであれば、1ヶ月程度でほとんど傷跡が分からないくらいにまで回復します。
早期に発見できれば、内視鏡での治療が可能ですし、手術が必要となっても早ければ早いほど、低侵襲な手術で治療が可能です。
最近では「完全腹腔鏡下結腸切除」のような、最初から最後まで腹腔鏡による操作で手術可能なケースもあります。腸を一旦外に出して切除する、といったような術式では、広範囲に腸を剥がす必要があります。
これを最小限に止めて、腹腔の中で切除し、腹腔の中で吻合する、ということができれば、より安全に手術が行えます。切除したものを直腸から取り出すという術式もあります。
直腸がんの特徴は、骨盤の深い、肛門に近い部分にできやすいということです。この場合、患者さんの懸念は「肛門を残すことができるか?」という点です。
直腸の場合は、深い部分の腸を剥がす必要があるので、周囲の内臓や神経を傷つける可能性があります。
性機能や排尿に関わる神経が密集していますので、生活の質に直結してきます。非常に繊細な技術が必要とされる治療です。
昨今は、腹腔鏡手術が発達してきており、このような狭い場所での複雑な操作がより安全に・効果的に行えるようになっています。
拡大した病変部などをモニターなどに映し出して確認しながら、手術が可能なのです。また、3D技術を導入した機器もあります。
技術の進歩によって、がんをとりながら、肛門を温存できる可能性が高まっています。
人工肛門になるかならないかの目安としては、がんの部位が肛門から5cm以上離れていることです。5cmの余裕があると、肛門を温存できる可能性が高まります。
それでは3cmでは出来ないのか、というと、全く可能性がゼロというわけではありません。
IRS(括約筋部分切除を伴う究極の肛門温存)という手術では、可能性があります。術後一時的に人工肛門になりますが、温存は可能です。
「これでは温存できない」と諦めていた方も、症例経験のある病院へのセカンドオピニオンをしてみると良いかもしれません。
発表では具体的な症例をいくつか紹介していただきました。
最近ではロボット手術の技術進歩が目覚ましいです。疾患によっては、保健適用も認可されるようになってきました。
ロボット手術で使われるロボットに付属しているアームは、非常に細かい操作が可能であり、カメラも非常に高性能です。
肛門温存の直腸がん切除のような緻密な操作を要求される手術も行いやすくなっています。
5Gによる通信革命で、遠隔手術も可能になるかもしれません。これによって、地域の医療格差が減少することが期待されています。
さらに進んだロボットの開発によって、より精密な手術が、より簡単にできるようになってきています。これは数年のうちに実現するでしょう。
ここで重要なのは、それを使う術者の「心」です。外科医たちの「心の根」「覚悟の幹」「智恵と行動の枝」があってこその技術革新でしょう。