大腸早期癌の診療と治療の最前線 -Part2-

大腸早期がんの診断と治療
大腸は約1.5mと非常に長い管腔臓器です。がんの罹患部位によって治療の選択肢・治療の難易度が大きく異なります。中でも最も手術難易度が高いのは、直腸部分にできた大腸がん(直腸がん)です。大阪医科大学病院 がんセンター 特務教授 奥田 準二先生にそのような直腸がんに対し、低侵襲手術である腹腔鏡下手術を行うメリットと治療方針の立て方のポイントについてお伺いしました。

 

【目次】

00:08~ 転移部位のチェックと大腸がんの手術の部位別困難度

04:35~ 大腸におこる疾患

05:35~ 大腸がん治療における腹腔鏡手術

08:27~ 大腸がんの転移・進展形式と治療方針

 

 

転移部位のチェックと大腸がんの手術の部位別困難度

 

大腸の周囲にはたくさんのリンパ節があり、それぞれに番号がついています。この分類によって、どのリンパ節へ転移があるかをチェックすることがステージの診断、治療方針の決定に非常に重要です。

盲腸~上行結腸、S状結腸は比較的手術がしやすいと言われていますが、横行結腸の左側は手術難易度が高いと言われています。横行結腸の血管のバリエーションが幅広いため、血管の走行に個人差があります。

また、背部に膵臓など重要臓器が位置していることも、手術難易度を高めています。

最も手術難易度が高いのは、直腸部分にできた大腸がんです。ここは骨盤の深部であるため、操作そのものが難しく、また性機能や排尿を調節する神経がたくさん走行しています。非常にデリケートな手術になるのです。

 

大腸に起こる良性疾患としては、直腸脱、大腸憩室炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープ、家族性大腸腺腫症などが挙げられます。

一方、悪性疾患としては大腸がん、NET(神経内分泌腫瘍)、悪性リンパ腫、GISTなどが挙げられます。この中でも頻度が高いのは大腸がんです。

 

 

大腸がん治療における腹腔鏡手術

 

大腸がんの術式はお腹を大きく切って(開腹手術)腸を切除するというのが長らく一般的でした。

しかし最近では、7、8割を腹腔鏡手術で行っています。数個の穴を開けるだけで、そこからカメラや手術器具を出し入れして、腸を切除します。

開腹手術よりも負担が少ないため、広く行われるようになってきました。

腹腔鏡手術は進行大腸がんの治療でも行われています。再発の可能性も考えると、腹腔鏡手術で癒着などのリスクを低減させておくのは有用といえるでしょう。

 

大腸がんが分かると、最も心配されるのは転移です。

例えば大腸がんがS状結腸付近にできたとすると、腸周囲の血管に入れば肺・肝転移、がんが腹腔へ散らばると腹膜転移や膀胱への転移(浸潤)の可能性があります。

これらを手術で取り切ることができません。化学療法がメインになります。「数を減らして、小さくして」手術可能性を高めます。

リンパ節転移のみであれば、病変部と一緒にリンパ節を切除することで対処します。ただし、「拡大合併手術」という方式で治療を行うのであれば、他臓器への転移も手術で治療することもあります。

これらの治療方針を取るには、初めのプランニングが重要です。そのため初診から専門家に診てもらうことが重要となります。

「開腹か腹腔鏡か」という議論ではなく、その場その場で、ベストな選択を取ることが重要です。

 

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