【目次】
00:18~ 直腸がん手術の注意点
02:40~ 大阪医大における大腸がん手術の特徴
04:50~ 超低位前方切除
05:42~ Miles手術(腹会陰式直腸切断術)
06:57~ 究極の肛門温存術・ISR(内肛門括約筋切除術)
直腸がんは、大腸がんの中でも特に患者さんの忌避が強いがんです。また治療手術をする医師にとっても、直腸がんの手術は高い技術を要求されるものとなっています。
直腸は、周囲に重要な臓器と神経が位置しており、骨盤の奥深いところにあるため、手術は難易度の高いものとなります。
患者さんが最も心配されるのが「肛門を残せるのか」という点ですが、肛門を残しながらがんを切除する、というのも非常に難易度の高い手技です。
大阪医科大学病院における大腸がん手術の9割5分は腹腔鏡下手術です。
そのうち、肛門温存は94%、吻合(縫合)不全は2.7%です。一般的に縫合不全の割合は5-10%と言われているため、施設としては低い方ですが、依然として0%にすることが難しい合併症です。
縫合不全を防ぐポイントとしては、一度の縫合で済ませる、補強縫合を行う、血流の確認が挙げられます。
神経損傷による排尿機能障害は一般的に7%程度と言われていますが、大阪医科大学病院では3%程度です。まだ満足のいく結果ではありませんので、日々より良い手術を目指しています。
超低位前方切除術は、腫瘍が肛門から4-5cm離れていれば可能です。肛門を残せる可能性があります。
しかし、腫瘍が肛門括約筋にまで浸潤している場合では、肛門ごと切除する必要があります。これをMiles手術(腹会陰式直腸切断術)といい、永久人工肛門が必要となります。
腹腔鏡手術でも可能ですが、人工肛門の開設が必要となるので、この手術を望まない患者さんは多くいます。
腫瘍が肛門から2-3cmしか離れていない場合でも「なんとか肛門を残せないか」というケースには、肛門からのアプローチを行います。
内括約筋を切っても、外括約筋を残す手術が行われます。これがISR(括約筋部分切除を伴う究極の肛門温存)です。
さらに腫瘍が浅い位置に止まっていれば、内肛門括約筋を全切除することもありますが、深い位置まで腫瘍があると括約筋を全て切除する必要があります。
このような場合は、抗がん剤を併用して腫瘍の大きさを小さくしてから、切除を行うという方法もあります。
放射線治療は、括約筋の機能が悪化することを懸念して、あまり行われていません。