直腸癌手術の注意点 -Part2-

直腸がんの手術
直腸がんは、大腸がんの中でも手術の難易度の高い部位の疾患となります。「肛門を温存」するか否かは患者さんにとって、術後の生活でのQOLを考える上で悩ましい決断を迫られることとなります。そこで、大阪医科大学附属病院 がんセンター 特務教授 奥田 準二先生に実際の手術症例のご紹介を通し、詳しくご解説いただきました。

 

【目次】

00:08~ 実際の症例紹介①

03:39~ 実際の症例紹介②

05:55~ pull-through(Reborn手術)

 

 

実際の症例紹介① ~再発後のISR併用~

 

症例を見てみましょう。肛門から3cm程度のところにがんが見つかったケースです。早期がんである可能性が高かったため、内視鏡で切除され、その1年半後に再発しました。

その後、この症例では、ISRを併用して、肛門からと腹部からの2方向アプローチで、肛門括約筋を残しながら腫瘍を切除しました。

発表内では、実際の手術の動画を観ながら解説しています。

切除した後は腸管を繋ぎますが、縫合不全や肛門周囲のただれを防ぐために、一時的に人工肛門を開設します。

人工肛門の開設については、生活の質にも繋がってくるため、よく主治医と話し合って、疑問の残らない状態で手術を受けることが大切です。

 

 

実際の症例紹介② ~進行がんで肥満の方に対するアプローチ・Reborn手術~

 

もう1つの症例は、肛門から3cm程度のところにできたがんで、2cm程度の進行がんです。深くまで浸潤はしていないものの、腸周囲のリンパ節に転移している可能性がありました。

そのため、腸ごと切除をする必要があり、肛門温存のためにISRが適用される症例です。

問題となったのは体重です。132kg、BMI44という体型で、糖尿病併発や睡眠時無呼吸症候群などもあります。そのため、大腸がんの手術の前にまずは痩せてもらう必要がありました。

1ヶ月で20kgの減量に成功しましたが、まだBMI37です。

肥満体型患者の手術は、縫合不全のリスクが高くなり、一時的人工肛門の設置も難しくなります。

 

ここで考え出されたのが「縫合するから縫合不全になる。縫合しなければ良いのだ」ということです。

これが「pull-through」という方法で、通常の腹腔鏡手術と同じように剥離・切除し、経肛門アプローチ(taISR)も行います。

切除した断端はつながずに、5cm程度肛門から出しておきます。術後1週間程度経ってから切除・吻合を行います。

これによって、腹腔内部での縫合不全は起こりづらくなり、一時的な人工肛門も不要となります。

このような一連の手術の方法を「Reborn手術」と呼んで、学術誌にも取り上げられており、肥満の人だけでなく、人工肛門を拒否した患者さんに対しても実施しました。

 

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