大腸がんの症状でいちばん多いのは、排便時の出血です。
トイレに行って便をしたときに血が混じっている、拭いたときに紙に血がついているといったことで、医療機関を受診される方が多いですね。
大腸がんが疑われるときにまず行うのは、大腸の内視鏡検査です。いわゆる「大腸カメラ」のことですね。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行って、がんが疑われるものが見つかった場合、「生検」といって、その部分を切り取って顕微鏡で調べます。
「がんかどうか」を調べるのです。
生検の結果、「グループ1」から「グループ5」に分けられます。
グループ1が「正常」、2が「炎症」、3が「異形」、4が「がんの疑い」、5が「がん」です。
つまり、良性か悪性かの分類が「グループ」です。
ときおり、「グループ4と言われました。末期がんということでしょうか」などと、「グループ」と「ステージ」を混同される方がいますが、「グループ」はあくまでも「がんかどうか」の分け方であり、がんの進行度をあらわすステージとは異なります。
また、「早期がんか、進行がんか」もわかりにくいかもしれません。
「早期がんか、進行がんか」を分けるのは、がんが腸の壁のどのくらいの深さまで入っているか、です。
大腸は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜」と5つの層にわかれています。
大腸がんでは、がんが粘膜または粘膜下層までにとどまっているものを「早期がん」、粘膜下層よりも深く潜っているものを「進行がん」と言います。
一方で、リンパ節に転移がなく、がんが粘膜下層または粘膜筋層にとどまっている場合、「ステージ1」と診断されます。
つまり、同じ「ステージ1」でも、がんが粘膜下層をこえて粘膜筋層に達している場合、「進行がん」と言われるのです。
では、なぜ「早期がん」と「進行がん」に分けるのでしょうか。
それは、早期がんであれば手術ではなく、内視鏡でがんを切除することが可能な場合が多い一方、進行がんでは手術になることが多いからです。
手術には、大きく分けて「開腹手術」と「腹腔鏡手術」の2種類があります。
開腹手術の場合、お腹を20センチくらい切り、肉眼で中を見ながら、かつ臓器を触りながら手術を行いますので、臓器が空気にさらされ、手術を行う部分以外もダメージを受けます。
そのため、手術後は腸のぜん動運動が悪くなったり、痛みがあったり、腸が癒着してしまったりすることがあります。
一方、腹腔鏡手術では、5ミリから1センチ程度の小さな傷を4、5個つけ、お腹を炭酸ガスで膨らませてスペースをつくって、内部を小型カメラで見ながら行います。
そうすると、当然、傷が小さく、体へのダメージも少なく、さらには内視鏡で拡大されて見えますので、より繊細な手術ができるというメリットがあります。
ただし、大事なのは、「腹腔鏡手術か、開腹手術か」ではなく、その人にとって最適な手術を選ぶことです。
たとえば、腹腔鏡手術でやり始めたものの、難しいため開腹手術に移行することは決して稀ではありません。
逆に、直腸がんで何度か手術を受けられている患者さんの場合、腸の癒着が強いことがあり、その癒着の部分は開腹して剥がし、一度お腹を閉じた後、腹腔鏡手術でがんをとることもあります。
つまり、開腹手術から腹腔鏡手術に移行することもあるのです。
ですから、どちらがいいということではなく、その人、そのときによって最適な治療があるということです。
「大腸がん」と診断されると、多かれ少なかれショックを受けるかもしれません。
でも、腸閉塞があったり、出血が多かったりしない限り、急いで手術、治療をしなければいけないわけではありません。
まずは、慌てず、自分一人で抱え込まないでください。
そして、ご家族など、身近な方に相談し、みんなで治療法や医療機関を探してください。
信頼できるかかりつけ医がいる場合は、その先生に相談するのも良いことだと思います。