「大腸がん」が疑われたら?

低侵襲
腹腔鏡下手術
TMN分類
「大腸がん」の患者さんは増えています。「12人に1人が大腸がんになる」と言われるほどですが、それでも「大腸がん」と診断されたら、「なぜ自分が?」と戸惑うと思います。 ここでは、「ステージとグループ」「早期と進行」「開腹手術と腹腔鏡手術」など、大腸がんが疑われるときに知っておきたい基本について、大阪医科大学附属病院がんセンター 消化器外科の奥田準二先生に教えていただきました。

大腸がんの症状とは

大腸がんの症状でいちばん多いのは、排便時の出血です。

トイレに行って便をしたときに血が混じっている、拭いたときに紙に血がついているといったことで、医療機関を受診される方が多いですね。

 

大腸がんが疑われるときにまず行うのは、大腸の内視鏡検査です。いわゆる「大腸カメラ」のことですね。

 

「ステージ」と「グループ」は別物

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行って、がんが疑われるものが見つかった場合、「生検」といって、その部分を切り取って顕微鏡で調べます。

「がんかどうか」を調べるのです。

 

生検の結果、「グループ1」から「グループ5」に分けられます。

グループ1が「正常」、2が「炎症」、3が「異形」、4が「がんの疑い」、5が「がん」です。

 

つまり、良性か悪性かの分類が「グループ」です。

 

ときおり、「グループ4と言われました。末期がんということでしょうか」などと、「グループ」と「ステージ」を混同される方がいますが、「グループ」はあくまでも「がんかどうか」の分け方であり、がんの進行度をあらわすステージとは異なります。

 

ステージ1でも進行がん⁉

また、「早期がんか、進行がんか」もわかりにくいかもしれません。

 

「早期がんか、進行がんか」を分けるのは、がんが腸の壁のどのくらいの深さまで入っているか、です。

 

大腸は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜」と5つの層にわかれています。

大腸がんでは、がんが粘膜または粘膜下層までにとどまっているものを「早期がん」粘膜下層よりも深く潜っているものを「進行がん」と言います。

 

一方で、リンパ節に転移がなく、がんが粘膜下層または粘膜筋層にとどまっている場合、「ステージ1」と診断されます。

 

つまり、同じ「ステージ1」でも、がんが粘膜下層をこえて粘膜筋層に達している場合、「進行がん」と言われるのです。

 

では、なぜ「早期がん」と「進行がん」に分けるのでしょうか。

それは、早期がんであれば手術ではなく、内視鏡でがんを切除することが可能な場合が多い一方、進行がんでは手術になることが多いからです。

 

開腹手術と腹腔鏡手術

手術には、大きく分けて「開腹手術」「腹腔鏡手術」の2種類があります。

 

開腹手術の場合、お腹を20センチくらい切り、肉眼で中を見ながら、かつ臓器を触りながら手術を行いますので、臓器が空気にさらされ、手術を行う部分以外もダメージを受けます。

そのため、手術後は腸のぜん動運動が悪くなったり、痛みがあったり、腸が癒着してしまったりすることがあります。

 

一方、腹腔鏡手術では、5ミリから1センチ程度の小さな傷を4、5個つけ、お腹を炭酸ガスで膨らませてスペースをつくって、内部を小型カメラで見ながら行います。

そうすると、当然、傷が小さく、体へのダメージも少なく、さらには内視鏡で拡大されて見えますので、より繊細な手術ができるというメリットがあります。

 

「開腹か、腹腔鏡か」ではない

ただし、大事なのは、「腹腔鏡手術か、開腹手術か」ではなく、その人にとって最適な手術を選ぶことです。

 

たとえば、腹腔鏡手術でやり始めたものの、難しいため開腹手術に移行することは決して稀ではありません。

 

逆に、直腸がんで何度か手術を受けられている患者さんの場合、腸の癒着が強いことがあり、その癒着の部分は開腹して剥がし、一度お腹を閉じた後、腹腔鏡手術でがんをとることもあります。

つまり、開腹手術から腹腔鏡手術に移行することもあるのです。

 

ですから、どちらがいいということではなく、その人、そのときによって最適な治療があるということです。

 

大腸がんとわかったら

「大腸がん」と診断されると、多かれ少なかれショックを受けるかもしれません。

でも、腸閉塞があったり、出血が多かったりしない限り、急いで手術、治療をしなければいけないわけではありません。

 

まずは、慌てず、自分一人で抱え込まないでください。

そして、ご家族など、身近な方に相談し、みんなで治療法や医療機関を探してください。

 

信頼できるかかりつけ医がいる場合は、その先生に相談するのも良いことだと思います。

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