食道がんは、他のがんと同様に、ステージが進むにつれて侵襲の大きな治療が必要になるため、早期発見が大切です。
食道がんの代表的な症状は“食事中ののどのつかえ”ですが、のどのつかえから食道がんが見つかったときには、ほとんどがすでに進行しています。
また、食道がんは「反回神経」という声帯を動かす神経のまわりにリンパ節転移が起こることが多く、最初に出る症状が“声のかすれ”であることも多いです。
そうすると、多くの患者さんは耳鼻科を受診されるのですが、耳鼻科領域にはなにも異常がないため、食道がんの発見が遅れることもあります。
声がかすれる原因のひとつに食道がんがあるということは、覚えておいてください。
食道がんの治療には、内視鏡治療、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の主に4種類があります。
がんが粘膜にとどまっている「ステージ0」では、内視鏡治療が基本です。
がんは粘膜にとどまっているものの近くのリンパ節に転移がある、または、がんが粘膜下層まで広がっているもののリンパ節転移はない「ステージ1」では、手術または化学放射線療法(抗がん剤治療と放射線治療の組み合わせ)になります。
どちらも治る可能性が高い治療法ですが、それぞれにメリット・デメリットがあるので、主治医とよく話をして選んでいただくことになります。
図)食道の断面図。粘膜層にとどまっているものはステージ0。
がんが固有筋層より深い「ステージ2」「ステージ3」は、切除可能な進行がんという位置づけで、術前化学療法と手術を組み合わせるのが現在の標準治療です。
ただ、手術を望まない方、全身状態の関係で手術が難しい方は、化学放射線療法が次の選択肢になります。
そして、ほかの臓器や遠くのリンパ節に転移がある「ステージ4」では、化学療法または化学放射線療法が一般的です。
図)がん研有明病院における食道がん治療のアルゴリズム
早期に見つけるには、まだ症状が無い段階で見つけなければいけません。
しかし、“食道がんになりやすい人”は、わかってきています。
代表的なのが飲酒と喫煙です。
まず、少量のお酒で顔が赤くなる人は、食道がんのリスクが非常に高く、そういう人が飲酒を継続すると、高い確率で食道がんになります。
また、喫煙習慣のある人のほうが食道がんになりやすく、飲酒と喫煙の両方の習慣がある人はさらにリスクが高くなります。
ある研究では、飲酒習慣も喫煙習慣もない人に比べて、「毎日タバコを20本以上吸う人」は5倍、「毎日1.5合以上飲む人」は12倍、その両方の習慣がある人は33倍リスクが高いという結果でした。
ですから、こうした“食道がんになりやすい要因”をもっている人は、定期的に内視鏡検査を受けることをおすすめします。
また、早期発見・早期治療が大切とはいえ、非常に進行した食道がんでも放射線治療、化学療法、手術の組み合わせで治ることもあります。
早期のがんに比べれば厳しいことは事実ですが、比較的身近に奇跡が起こるのが食道がんですので、あきらめずに治療をすることもとても大切です。