食道がんの手術、合併症を起こさないためには?

低侵襲
胸腔鏡下手術
腹腔鏡下手術
食道がんの手術後は、肺炎や反回神経麻痺(声のかすれや誤嚥など)などの合併症が起きやすいことが知られています。これらの合併症は命にかかわることもあるため、合併症の予防がとても大切です。食道がんの手術では、なぜこうした合併症が起こるのか、合併症を起こさないためにはどういうことが必要なのか、昭和大学病院 消化器・一般外科の村上雅彦先生にうかがいました。

食道がんの手術は、なぜ難しいのか?

 

食道がんの手術は、胸部・腹部・頸部の3か所を一度に手術する大がかりなものであるほか、食道の近くには心臓や肺という重要な臓器があり、大きな血管も走っています。

 

また、食道がんの手術では、首から腹部にかけてのリンパ節をきれいに取り除くことが求められますが、リンパ節の近くには複数の神経が走っています。

 

手術後に合併症が起こらないようにするには、それらの神経にダメージを与えず、リンパ節のみをきれいに取り除かなければいけません。

そのため、がんの手術のなかでも食道がんの手術は難易度が高いと言われています。

 

それを胸腔鏡、腹腔鏡で行うには、さらに難易度が高く、ある程度の経験数と技術が求められます。

 

食道がんの手術後に起きやすい合併症

 

食道がんの手術後に起きやすい合併症には、次のようなものがあります。

 

●肺炎

手術後の痛みなどが原因で痰を出せなくなると、肺炎が起こりやすくなります。

また、手術直後に嚥下機能(飲み込む力)が落ちることも、肺炎を起こしやすくなる原因です。

 

●反回神経麻痺

食道がんの手術では、声帯の動きをコントロールする「反回神経」という神経の近くのリンパ節を取り除きます。

反回神経を傷つけることで「反回神経麻痺」が起こり、声がかすれたり、食べ物がつかえたり、誤嚥しやすくなったりすることがあります。

 

●縫合不全

食道がんの手術では、食道を切除したあと、胃(または腸)を持ち上げて残った食道につなぎ合わせます。

この縫合が不完全だと、つなぎ目から唾液や食べ物が漏れてしまうことがあります。

 

食道がんの手術は、手術の質とチームの質

食道がんの手術後、前述のような合併症を起こさず、患者さんが安心して元どおりの生活に戻れるかどうかは、手術の質のみで決まるわけではありません。

 

大がかりな手術だからこそ、「周術期管理」と言って、チーム医療による手術前後の管理が重要です。

 

私は、食道がんの手術成績を左右するのは、手術の質が半分、周術期管理の質が半分だと思っています。

医師、看護師、薬剤師のほか、リハビリチームも大切ですし、嚥下機能を評価する言語聴覚士口腔ケアを行う歯科医師、歯科衛生士の存在も重要です。

 

手術の質と、術前・術後も含めたチーム医療の両方が熟練していなければ、合併症なく患者さんが退院することは難しいでしょう。

 

食道がん手術での病院選びの2つのポイント

 

食道がんの標準手術は開胸・開腹手術ですが、胸腔鏡・腹腔鏡手術の専門医としては、やはり胸腔鏡と腹腔鏡を用いた食道がん手術のほうが、手術後の痛みが少なく、早く回復して早く退院できるのでより良い方法だと思っています。

 

ただ、繰り返しになりますが、難易度の高い手術ではあるので、一定の手術件数があること、チーム医療による周術期管理をしっかりしていることが欠かせません。

 

病院を選ぶときには、聞きにくいかもしれませんが、

「食道がんの手術をこれまでに何件くらいやっていますか」

「手術後の合併症はどのくらいの比率で起きていますか」

 

という2つを確認することをおすすめします。

しっかり答えてくれる病院は、良い病院だと思います。

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