大腸がんのロボット支援手術――術後の機能障害、再発リスクも低下

低侵襲
排尿障害
ロボット手術
大腸がんのなかでも肛門に近い直腸がんの手術は、より難しいと言われます。理由は、直腸のまわりには排泄や性機能にかかわる自律神経が集まっているため、それらをなるべく傷つけないようにしつつ、がんをしっかり取り除かなければいけないからです。 その点、手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を使った直腸がんの手術では、自律神経を守り、手術後の機能障害を減らすことが可能になるそうです。 前職の静岡県立静岡がんセンター時代から国内でも最多の直腸がんのロボット支援手術を担当してきた、東京医科歯科大学 大腸・肛門外科の絹笠祐介先生に話をうかがいました。

大腸がんのロボット手術は術後の機能障害が少ない

前職の静岡がんセンターでは、これまでに600例を超える直腸がんのロボット支援手術を行っていました。

その経験から、ロボット支援手術では、手術後に機能障害が起こすことが非常に少ないことがわかってきました。

 

一般的に直腸がんの手術では、排尿障害や性機能障害といった機能障害が起こりやすいことが知られています。

たとえば、国内で行われた大規模臨床試験(JCOG0212「臨床病期Ⅱ、Ⅲの下部直腸癌に対する神経温存D3郭清術の意義に関するランダム化比較試験」)では、6割の方に排尿障害が起き、7~8割の方に性機能障害が起きたと報告されています。

 

ところが、同じ手術を静岡がんセンターで手術支援ロボットを使って行うと、排尿障害が生じるのは5%前後です

もちろん、私たちがそうした手術に慣れているということもあります。

実際、もともと腹腔鏡手術でも排尿障害が起こるのは10%前後でした。

しかし、ロボット支援手術では、さらに半分に減らすことができているのです。

 

 

ロボット手術は再発率も低い

また、直腸がんの手術は、1割程度の患者さんに局所再発が起こることが大きな問題になっています。

というのは、直腸は狭く深いところにあるため、ほかのがんの手術に比べて、がん細胞を取り残してしまいやすいのです。

 

その点、静岡がんセンターで行ってきたロボット支援手術では、局所再発を起こす割合も非常に少ないこともわかってきています。

 

 

患者さんもガイドラインに目をとおして

大腸がんを患う方はいま、非常に増えています。

 

手術をして治る患者さんが多いのが大腸がんの特徴ですが、適切な治療を受けなければ、せっかく治るがんが治らなかったり、余計な合併症が出てしまったりすることもあります。

『患者さんのための大腸癌治療ガイドライン』も出ているので、患者さん自身も、ガイドラインどおりに治療が行われているかどうかをしっかり確かめていただきたいと思います。

 

また、がんをすべて取り切り、かつ、できるだけ機能障害を起こさないように手術をするには、手術支援ロボットは非常に有用なツールです。

ただし、ロボット支援手術や腹腔鏡手術といった新しい治療は、まだまだ経験による差が大きいことも事実です。

 

こうした新しい治療を希望する際は、治療に長けた医師、病院をしっかり選んでください。

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