大腸がんの手術の種類。新しい治療法の腹腔鏡手術やロボット手術って何?

低侵襲
腹腔鏡下手術
ロボット手術
大腸がんの手術の標準的な方法は、開腹手術ですが、腹腔鏡手術、ロボット支援手術といった新しい治療法も増えています。それぞれどのようなメリット、デメリットがあるのか、国立大学東京医科歯科大学 大腸・肛門外科の絹笠祐介先生にうかがいました。

大腸がん手術の半分は腹腔鏡手術に

大腸がんの手術は、がんから十分な距離を取ってがんができている部分の腸を切除し、まわりのリンパ節を取るのが基本です。

 

その方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術という大きく3つのやり方があり、現在の「大腸癌治療ガイドライン」では、お腹を大きく切る開腹手術が標準治療になっています。

なぜなら、開腹手術は、歴史もあり、手技も安定しているからです。

 

一方で、今増えているのが、腹部にあけた小さな穴から小型カメラと細長い治療器具を挿入して手術を行う腹腔鏡手術です。

外科医の経験やチームとして の習熟度をふまえ、できる範囲で腹腔鏡手術が行われていますが、現在、すでに大腸がんの手術の5~6割が腹腔鏡で行われています。

 

 

腹腔鏡手術のメリット・デメリット

一方、ロボット支援手術は、「ダ・ヴィンチ」という手術支援ロボットを使った手術です。

 

2018年4月から、大腸がんのうち直腸がんのロボット支援手術が保険適用となることが決まりました。

 

このロボット支援手術のメリットをお話する前に、まずは、腹腔鏡手術のメリット・デメリットについて説明しましょう。

 

腹腔鏡手術は、開腹手術に比べて傷が小さくてすむので、痛みが少ない、腸管の回復が早い、社会復帰が楽といったメリットがあります。

また、手術を執刀する側としては、開腹手術ではどうしても見づらい、肛門に近い深いところまでよく見えるというメリットもあります。

図)大腸のイラスト。直腸は開腹手術だとどうしても見づらい場所にある。

 

 

このように腹腔鏡手術自体、とても良い治療なのですが、一方で、使える道具に制限があります。

また、実際の手の動きと反対の方向に鉗子が動くので、自分の思い通りに鉗子を動かせるようになるまでにはかなりのトレーニングと、外科医のセンスが必要です。

 

つまり、上手に手術をできるようになるまでが容易ではないのが、腹腔鏡手術の欠点なのです。

図)腹腔鏡手術のイメージ。モニターを見ながら鉗子を操作する。思い通りに鉗子を動かすには熟練が必要。

 

 

なぜロボット支援手術は優れているのか

ロボット支援手術は、小さくあけた穴から小型カメラや治療器具を入れて行うことは腹腔鏡手術と同じです。

 

そのため、腹腔鏡手術と同様、体への負担が少なく、小さなキズで痛みが少ない、回復が早いというメリットがあります。

 

腹腔鏡手術と大きく違うのは、鉗子の動かし方です。

ロボット支援手術では、三次元画像を見ながら4本のロボットアームを遠隔操作します。

 

腹腔鏡手術では実際の手の動きと反対の方向に鉗子が動きますが、ロボット支援手術では、手の動きがそのまま鉗子に反映されるので、動かしたい方向に直感的に自在に動かすことが可能です。

 

また、ロボットアームの先端に取り付けられた鉗子には、人間の手のように複数の関節があるので、曲げたい方向に自由に曲げることができます。

さらに、実際の手の動きを縮尺して鉗子に反映させることもできるので、より繊細な動作が可能になります。

 

そのため、まだ経験の浅い医師でも安定した手術を行えるようになり、また、経験豊富な医師にとっても、手術のクオリティが上がるのです。

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