直腸がん、肛門温存手術で考えるべきこと

腹腔鏡下手術
直腸がんの手術と言えば、以前は永久的に人工肛門になることが多かったものの、最近では、肛門にかなり近い直腸がんでも、肛門を残す手術ができるようになってきました。人工肛門は避けたい、できるだけ自分の肛門を残したいと考える患者さんは多いでしょう。 ただし、「肛門を残せても、機能を残せなければ大変なことになる」と、岩手医科大学附属病院 外科の大塚幸喜先生は指摘します。それはどういうことなのでしょうか――。

直腸がんの肛門温存手術

直腸がんの手術で気になることのひとつが、「肛門は温存できるのか、人工肛門になるのか」でしょう。

 

実際、「肛門を温存できないでしょうか?」とお尋ねになる患者さん、他院で「肛門の温存はできない」と言われてセカンドオピニオンにいらっしゃる方はとても多いです。

 

直腸がんのなかでもがんが肛門に近い下部直腸がんでは、従来は人工肛門になることが多かったのですが、手術技術が進化し、最近では、肛門を閉める筋肉である肛門括約筋をすべて、あるいは部分的に残すことで肛門を温存する「肛門温存手術」が増えています。

 

ただし、残念ながら、すべての患者さんに肛門温存手術が適応されるわけではありません。

よく適応を考えることが大切です。また、温存できたとしても、手術後の後遺症についても十分に理解してもらわなければなりません。

 

肛門温存手術後、排便習慣は変わります

肛門を残せても、機能を果たせていない肛門では大変なことになるのです。

語弊があるかもしれませんが、垂れ流しのようになってしまいます。

 

ですから、肛門があるだけではなく、肛門の機能を残してあげなければなりません。

 

また、肛門を温存できても、今までの排便習慣とは全く異なる肛門になります。

具体的には、今まで1日1、2回の排便習慣だったのが、最初のうちは10回以上になります。

 

それが、徐々に落ち着いて1日5回前後になり、さらに少なくなる方もいれば、1日5回前後のまま落ち着く方もいます。

 

手術前とまったく同じ排便習慣にはなりません。そのことを十分に理解していただく必要があります。

 

高齢者に肛門温存手術は適しているか

高齢者の方に肛門温存手術を行っていいのかどうかは、よく考えなければなりません。

 

前述したように1日に何度もトイレに行く生活になるのですから、足腰が悪かったり、ほとんど寝たきりで過ごされていたりする高齢者に適しているのか……。

便意を感じてトイレに行こうと思ったら、途中で便が漏れてしまったということもあります。

 

ですから、十分に話し合う必要があります。

 

当院では、外来で数回にわたって、我々外科医と、そしてWOCナース(皮膚排泄ケア認定看護師)という排泄ケアの専門の看護師も話し、患者さんご自身に十分に理解していただいたうえで、治療法を選択してもらうようにしています。