大腸がんの場合、じつはまったく症状がない方が増えています。
逆に症状が出てから受診される方は、がんが進行しているケースが多いです。
たとえば、がんが大きくなり、腸管の内腔が狭まって通過しにくくなっていると、お腹に痛みが出たり、便が細くなったり、あるいは血便が出たりといった症状が出やすくなります。
大腸がんで手術を行う場合、まずCTを撮ります。
そして、肺や肝臓、リンパ節など、全身に転移がないかを確認するとともに、血管がどのように走っているかを検査します。
さらに、進行がんの場合、PET検査を追加することが多いです。
CTではとらえきれないようながんはないかを確認し、CT検査、PET検査の両方を見て現状を把握するよう努めています。
治療の柱となるのは、手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療の3つです。
このうち手術は、開腹手術と腹腔鏡手術の大きく2つに分かれます。
開腹手術は以前からずっと行われてきた手術方法です。
一方、腹腔鏡手術は、大腸がんに対しては90年代半ばから普及しはじめ、現在では、進行がんであっても開腹手術と同等の成績が得られるようになっています。
また、傷が小さい、痛みが少ない、手術後の回復が早いといった低侵襲(体へのダメージが小さいこと)ゆえのメリットに加え、手術後に腸が癒着することが少ないために腸閉塞などが起こりにくいということも言えます。
そのため、私たちの施設では、ほとんどのケースを腹腔鏡手術で行っています。
進行した大腸がんでは、がんを根治切除できたとしても、再発も視野に入れながら戦略を立てる必要があります。
とくに「直腸がん」は、悪性度が強いことが知られています。
そのため、肝転移や肺転移、リンパ節転移といった遠隔転移のみならず、骨盤内の局所再発も同程度あります。
そのことが、ほかの大腸がん(結腸がん)との違いです。
局所再発が起こると、痛みが強くなったり、感染を起こしたりするケースがあり、生活に支障をきたします。
そこで、行われているのが「術前化学放射線療法」です。術前化学放射線療法によって、局所再発率が下がることが証明されています。
大腸がんの腹腔鏡手術がはじまって、20年以上が経ちますが、その質をさらに上げていくことが必要です。
とくに、「機能を意識した手術」を心がけています。
たとえば、直腸がんの手術であれば、手術後の肛門機能、排便機能を守るということ。
そのためにはどういった手術方法がいいのか、どのようなラインを剥離・切離すればいいのか、患者さんにアンケートを取るとともに、最新の知見を確認しながら、細かくこだわって手術を行っています。
また、腹腔鏡手術の進化系として、手術支援ロボットを活用した「ロボット支援手術」も行われています。
これまで大腸がんに対するロボット支援手術は保険収載されていませんでしたが、この春(2018年4月)の診療報酬改定で、直腸がんに対するロボット支援手術が保険で認められるようになりました。
これまでは保険収載されていないためになかなか広まっていませんでしたが、今後、新しい手術支援ロボットもどんどん出てくると思いますので、私たちもいつでも対応できるよう準備しております。