肝臓がんに対するリザーバー動注化学療法はどのように行なわれるか

化学療法
動注化学療法
抗がん剤による治療を行う場合、全身に抗がん剤を投与する全身化学療法と、カテーテルを通してがんの栄養動脈に直接抗がん剤を投与する動注化学療法の、二つの方法があります。動注化学療法は、どのような症例に対して、どのような方法で行われるのでしょうか。 久留米中央病院院長の板野哲先生に、肝細胞がんにおける動注化学療法についてうかがいました。

 

動注化学療法の適応とその方法

 

 

肝臓がん、特に原発性肝がんの主な割合を占める肝細胞がんの治療について説明いたします。肝細胞がんの治療において、現在、日本で最も広く行われている治療法は、血管造影による治療法の中でも、TACE(肝動脈化学塞栓療法)と呼ばれる方法です。これは、肝臓がんに栄養を与えている動脈にカテーテルを入れて、そこから直接、抗がん剤と塞栓剤を注入し、がんを死滅させる治療法になります。

 

 

肝動脈化学塞栓療法(TACE)のイメージ図

 

 

TACEには、ある程度の大きさまでのがんでないと治療できないという制限があります。私であれば、約5cmまでのがんであれば、TACEを数回に分けて治療することもあります。

 

しかし、TACEで対応できるサイズ以上に大きな肝がんや、病変が多発している肝がん、あるいは、門脈と呼ばれる肝臓の中の大事な栄養血管にがんが侵入してきているような進行した肝がんステージⅣというタイプの肝がんなどの場合においては、『動注化学療法』という方法を、私は第一選択の治療法としております。

 

 

肝がんの病期分類

 

 

動注化学療法においては、肝臓の中にカテーテルを入れ、そのまま体内にカテーテルを留置します。このカテーテルの入り口の先端部分に、皮下埋め込みポートという、針を刺すためのポートを繋ぎ、埋め込みます。このポートに小さな針を刺すことで、そこからポートを通してカテーテル内に薬剤を注入し、腫瘍の栄養血管まで薬剤を到達させることが可能となります。

 

このように、体内に留置したポートとカテーテルを通して、持続的に抗がん剤を注入することにより、がんを縮小させていく治療法を、動注化学療法と呼んでいます。

 

 

リザーバー動注化学療法

 

 

リザーバー動注化学療法のイメージ図

 

 

一般的に我々が行っているリザーバー動注化学療法とは、リザーバーと呼ばれる、抗がん剤を動注できるシステムを体内に埋め込まなければいけませんので、埋め込む手技を行う際、初回に必ず入院が必要となります。初回の入院では、リザーバーを埋め込み、その後、きちんと動注化学療法が行えるかの試行としての治療を1~2クール行い、終了後に退院となります。そのため、初回の入院は、約二週間の期間を要します。

 

その後の治療は、基本的に二週間から三週間に一度、外来を受診していただき、外来にて、ポンプを用いて抗がん剤を注入する形式になります。

 

 

リザーバーの留置方法

 

 

リザーバー留置のアプローチ方法

 

 

我々が行っているリザーバーの留置方法としては、主に二つの方法があります。一つは、左右どちらかの大腿動脈、すなわち足からカテーテルを挿入するタイプです。もう一つは、左の上腕動脈からカテーテルを挿入するタイプです。合計二つのアプローチ方法があります。

 

血管の形態のパターンに応じて、上から挿入するタイプと下から挿入するタイプを、使い分けることが可能です。100人リザーバーが必要な方がいたら、ほぼ100人全員に、適切なリザーバーを留置することが可能です。

 

現在、多くの施設では、私がリザーバーで動注化学療法を行っているような肝細胞がんに対して、内服薬での治療を行うようになりました。

 

現在は、動注化学療法を施行している施設も少なく、リザーバーを留置する技術を有する医師も減りつつあると思われます。そのため、現在、適切な方法で、的確にリザーバーを入れられるドクターには、希少価値があります。