肝細胞がんは、自覚症状が出ることは少なく、B型肝炎やC型肝炎のフォローアップ中に画像検査で見つかることが多いです。
そのほか、最近では、B型肝炎、C型肝炎以外にNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)やアルコール性肝障害に合併した肝細胞がんも増えています。
そのため、これらの方々に対しても、腹部エコーやCT、場合によってはMRIによる画像検査が必要だと思います。
肝細胞がんが疑われたら、腹部エコーや造影CT、肝臓造影MRI(EOB-MRI)、さらに最近では造影腹部エコー検査も使い、画像検査で、確定診断に近い画像所見が得られるようになっています。
次に治療をする上では、肝臓の総合力、つまりは肝臓の予備力と治療効果のバランスを取ることを第一義に考えています。
治療法には、肝切除(手術)、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法などがあり、肝炎、肝硬変の進行に伴って低下した肝予備能をしっかり評価して、その範囲内でより治療効果の高い治療法を選択することが大切です。
肝臓の機能が非常に良くても肝細胞がんが多発している場合は、肝切除が難しいので、肝動脈の塞栓療法が第一選択になりますし、逆に肝臓の機能が良くて腫瘍(がん)が大きくても、単発であれば、肝切除がもっとも治療効果が高く、安全性も高い治療法になります。
一方、肝硬変が進んだ状態であれば、肝切除が安全にできません。ただ、2センチ以下の肝細胞がんであれば、ラジオ波焼灼療法で非常に高い治療効果を得ることができます。
このように、「肝臓の総合力」と「がんの進展度」という2つのベクトルで治療法を選択します。
肝細胞がんの治療は、5年前、10年前と比べると非常に進歩しています。
ひとつは、肝切除技術が進歩し、出血量が非常に少なくてすむようになりました。
もうひとつは、以前は切除不能と言われていた大腸がんの肝転移が、化学療法(抗がん剤治療)がよく効くようになったことで、根治的な肝切除が可能になるケースが増えてきたことです。
そうした例では、より広い範囲での肝切除が必要になりますが、大量肝切除であっても、肝臓の機能をしっかり残し、安全性を確保できる手術の方法が考案されています。