最初に開発された内視鏡による大腸ポリープの切除術をポリペクトミーと呼んでいます。これは、内視鏡の先端についたスネア※1をポリープに引っかけ、高周波の電流を流すことで切除する方法です。
ところが大腸ポリープには隆起したものと平たいものがあることから、内視鏡の先端についたスネアが引っかからないものがでてきます。これを解決させるために登場したのが、EMRと呼ばれる内視鏡的粘膜切除術になります。
EMRは、ポリープやがんの粘膜に生理食塩水等を注射することで病変を膨らませ、隆起したところにスネアを引っかけて切除する方法です。これにより平たい病変が内視鏡によって取れるようになったのです。しかしここで新たなる課題がでてきました。それは、スネアの大きさには限界があることです。
EMRの場合、約2cm位までのポリープやがんを綺麗に切除することができますが、2cm以上になると1回では取り切れないのです。つまりEMRを何度も実施することになり、病変がぶち切り状態になります。これでは細かい標本になり、病理の先生が診断しにくくなるのです。またEMRではポリープなどがぶち切れになるため、病変が残ってしまうことがあります。
このようなぶち切れになったポリープを無くすために開発されたのが、スネアにかわりに電気メスを使うESDです。
ESDは、病変の外側を電気メスで切り、その下を剥離※2しポリープやがんを切除する方法です。簡単にいうと、たこ焼きをくり抜くようなやり方で病変を取ることです。
最近の流れとして、ポリープやがんを内視鏡によって切除するとき、2cm以下であればEMR、2cm以上であればESDといわれるようになっています。
※1スネア:snareということばの意味は、動物などの足を捕らえるためのわなのことです。大腸内視鏡の場合、ポリープを切除する目的で内視鏡の先端につけられた金属性の輪っかのことです。
※2剥離:剥がれ取れること。剥がして取ること。目の網膜が剥がれる網膜剥離という病気があります。
1970年ごろから、電気を流して大腸ポリープを内視鏡で切除する方法が行われてきました。この電気による病変の切除は、切ったときに出血が少ないことから、皆が安心してできる切除術でありました。
しかしよく考えると、病変を取るとき焼け焦げを作りながら切除することになり、熱傷が大腸壁にできているのです。実際には、電気が流れているスネアで切除していると出血が少ないことから大したことがないと見えるのです。ところが、後から傷が深くなったり、出血したり、穴があいていたりすると考えられるようになったのです。
そこで、10mm(1cm)等の小さいポリープのときは、スネアに電気を通さずブチッとちぎったがよいといわれるようになったのです。この方法では、ブチッとちぎった瞬間は出血するのでドキッとしますが、実際には傷口が10mm程度の小さい傷になることから、すぐに治ります。
このような考え方から、そのまま電気を流さずにポリープをブチッとちぎった方が良いというコンセプトから、コールドポリペクトミーと呼ばれる切除術が登場しました。
現在、コールドポリペクトミーという切除術は、世界中で使われるものになっています。
日本の内視鏡医は、基本的に腕がいいといわれています。
つまり大腸ポリープや早期の大腸がんをEMRやESD、またはコールドポリペクトミーで切除するときは、内視鏡専門のクリニックやある程度大きな病院であれば、心配せずに内視鏡が受けられることにつながります。
それに、大したことのないポリープを見つけて切除しても、後から手術が必要な大腸がんであったというケースが時々あります。だから、内視鏡専門医で正確な診断をしてくれる先生に診てもらった方がいいということになります。
大腸がんは、ポリープが前癌病変と考えられているため、ポリープを切除することで大腸がんを減らすことができると考えられています。つまり予防できるがんといわれています。
でも実際は、大腸内視鏡検査でポリープを発見し、それを切除するところまでたどり着けていないのが現状になっています。だから、あまり大腸がんを減らすところまで来ていないのです。
大腸がんは、ほかの消化器がんに比べて、ステージの割には比較的に予後の良いがんといわれています。
現在、大腸がんを治療するための手術であったり、抗がん剤等がどんどん増えてきています。だから転移したとき、転移したところをもう一度手術したりできるがんであります。
大腸がんは、決して諦めずに良い治療を探していった方が良いと思います。