予後の良い食道がんの手術方法!傷も小さく、合併症リスクも低い新たな手術方法とは?

縦隔鏡手術
食道がんの治療方法は大きく分けると、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法(化学療法)の4つが挙げられます。食道がんの進行の具合によって適切な治療法は異なります。単独の場合もあれば、いくつかの治療法を組み合わせて行うこともあります。 その中でも、内視鏡を用いた外科的治療法が今、盛んに行われています。この外科的治療法について、具体的な手法とそのメリットとデメリットについて、京都府立医科大学・消化器外科の藤原 斉先生に教えていただきました。

 

食道がんの外科的治療の基本方針:リンパ節も同時に切除して転移・再発を未然に防ぐ!

 

 

食道がんの外科的治療の基本的な方針は、腫瘍部分の切除と同時に周囲のリンパ組織も切除することです。

このようにリンパ組織を切除することリンパ節郭清と言います。

リンパ節郭清は、リンパ節転移を起こしやすいがんに対して行う治療です。

 

食道がんは、頸部、胸部などのリンパ節に転移を起こしやすいがんであるため、転移・再発を防ぐために、腫瘍を切除する際にはリンパ節も同時に切除するのが基本的な方針となります。

 

 

内視鏡を用いた食道がんの外科的治療:侵襲が少なく、身体への負担も少ない胸腔鏡下手術が主流!

 

 

開胸・開腹手術における主な合併症

 

 

内視鏡を用いた食道がんの切除術としては、胸腔鏡下手術が従来行われてきました。

これは、胸部を大きく開く開胸手術に比べて侵襲が少ないため、体力のない高齢者や開胸手術が不可能な患者にも適用できる、身体的な負担の少ない手術方法です。

1cm程度の穴をいくつか開けて、そこから手術器具を入れて、切除を行います。

 

 

食道がんの治療トレンドはより侵襲の少ない縦隔鏡下手術へ!より予後の良い手術法とは

 

 

先日から、新たに縦隔鏡下手術という手術方法が保険適用になりました。

これは、胸腔鏡下手術よりもさらにメリットの大きい手術法として注目されており、今後の食道がんの治療方法のシェアが高くなることが予想されています。

 

 

縦隔鏡下手術の特徴・利点

 

 

縦隔鏡下手術では、首の付け根から気管の前を通過させて内視鏡を挿入します。

胸腔鏡下手術では肺や気道、食道を避ける必要がありましたが、首の付け根から内視鏡を挿入する縦隔鏡下手術ではその必要がありません。

他の臓器を傷害せずに自然な形で腫瘍を剥離、リンパ郭清することができます。

 

術後の合併症は予後に関わる重大な問題ですが、特に術後に肺炎を起こすと生存率が悪くなるという報告があります。

縦隔鏡下手術は開胸手術と比較して、肺炎を起こすリスクが圧倒的に少ないと言われています。

 

 

経胸vs縦隔鏡 生存率比較

 

 

また、5年生存率を見ると、従来の開胸手術と比較して、生存曲線は同等かそれ以上、という結果も出ています。

そのため、開胸手術のリスクが低い患者であっても、縦隔鏡下手術を行うメリットは大きいと言えるでしょう。

 

 

耳鼻科の手技技術を応用し、より後遺症の少ない食道がん手術へ!NIMの応用

 

 

甲状腺と反回神経

 

 

食道がんは気道の周囲(反回神経周囲)にあるリンパ節への転移が広範に、早期の段階から起こるタイプのがんです。

そのため、それ以上の転移を防ぐためにも、気道周囲、上縦隔の周囲のリンパ節を徹底的に郭清することが重要となります。

 

この時に、反回神経麻痺が問題となります。

反回神経とは、鎖骨近くの動脈のところでループしている神経で、主に声帯の動きを制御しています。

 

反回神経が麻痺すると、声がガラガラになったり誤嚥を起こしやすくなり、肺炎のリスクが上がってしまいます。

これは、反回神経が、食べ物を飲み込む時にも声帯を動かして誤嚥しないように調節する働きを担っているためで、頸部の手術全般で、反回神経麻痺を起こさないことは重要なポイントとなります。

 

 

術中ナビゲーションとNIM

 

 

ここで、甲状腺手術で用いられるNIMという技術が大きな助けになっています。

これは反回神経、迷走神経を人為的に電気刺激することで、生じる生体反応を手術中にリアルタイムで確認しながら反回神経麻痺を起こさないようにするという技術です。

 

縦隔からアプローチする食道がんの手術でもNIMの応用をすることで、手術後遺症としての反回神経麻痺のリスクを大きく減らすことができます。

また、この手法を用いると、反回神経麻痺が生じたとしても、麻痺からの回復スピードが従来よりも圧倒的に早くなることが報告されています。

 

 

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