乳がんは全切除が基本?乳房部分切除でもAPBI(加速乳房部分照射)と組み合わせて再発を防ぐ

放射線治療
乳がんの治療では、手術によって外科的にがんを取りきることが基本です。手術には大きく分けて、乳房を残す乳房部分切除術と、乳房を全部切除する乳房切除術の2つがあります。 術後の予後や、再発防止を考えると乳房全て切除する方が推奨されることもありますが、放射線治療を上手く組み合わせることで、部分的な切除で済むケースもあります。 乳房の部分切除術後の放射線治療について、国立がん研究センター中央病院・放射線治療科の伊丹 純先生先生に教えていただきました。

 

APBI(加速乳房部分照射)とは:最大のメリットは治療期間が短いこと

 

 

乳房部分切除術では、腫瘍部分だけをくり抜くようにして切除して、さらに脇の下のリンパ節の一部も切除します。

乳がんはリンパ節転移が非常に多いがんの1つです。

そのため、腫瘍の切除と同時に切除してきたリンパ節組織を顕微鏡で検査して、転移の有無を確認することは必須となっています。

 

リンパ節転移がないことを確認した場合であっても、部分切除の場合は、乳房内に取りきれずに残ってしまったがん細胞によって再発することがあります。(部分切除の再発率は5~10%程度)再発した場合は乳房全体を切除する、乳房切除術を行います。

 

乳房を全て切除した場合であっても、再建術という手法によって、ある程度は乳房の形を取り戻すことができます。しかし、手術が複数に渡ると、患者の心身への負担は大きくなります。

そのため、部分切除術の後は放射線照射を行い、根治を目指します。

 

 

放射線治療の回数と期間 (APBIとの比較について)

 

 

放射線の照射治療は、標準で5週間、毎日照射が必要になります。

この治療法では、患者の通院負担が非常に大きいため、放射線治療を短くできないかということで考えられたのが、APBI(加速乳房部分照射)です。

 

 

APBIは、腫瘍の切除をした周囲にだけ放射線を照射するという方法です。

従来の方法であれば、上半身の広い範囲に放射線を照射するため、1日に浴びても良い放射線の量にすぐ達してしまい、腫瘍部分に効率よく放射線を照射することができませんでした。

 

APBIの場合、照射範囲が小さいため、1度によりたくさんの放射線を照射することができます。このため、従来は5週間かかっていて通院治療が、1週間程度で終わります。

これは、患者にとってとても嬉しい改善点と言えます。

治療期間は短縮されますが、その後の治療経過についても同じ程度に良く、メリットが大きい治療法です。

 

 

APBIの種類は2つ:腫瘍の周囲にだけ放射線を照射できる「小線源治療」が推奨!

 

 

APBIには2種類あります。

1つ目は、身体の外側から放射線を照射する方法です。

この場合、乳房だけに放射線を効かせることは難しく、肺や心臓にも放射線が照射されます。将来的に心肺機能に副作用が生じる可能性があるため、あまり推奨されません。

 

2つ目は、小線源治療です。これは、腫瘍の近くに放射線を発する「線源」と呼ばれる針金のようなデバイスを埋め込むことで、がんの周囲にだけ放射線を照射する治療方法です。

小線源治療の場合、1週間程度の入院と手術が必要ですが、術後すぐに仕事などに復帰することも可能です。

 

 

APBIに用いるデバイス:マルチカテーテルとSAVI(乳房小線源治療用アプリケーター)

 

 

APBIに用いるデバイスは2つあります

1つ目は、串状のデバイスで、これを腫瘍の周囲に何本か刺します。

これはマルチカテーテル法と呼ばれる方法で、これによって放射線照射を行います。

 

 

SAVIを用いた治療イメージ図

 

 

2つ目はSAVI(乳房小線源治療用アプリケーター)と呼ばれるデバイスです。

腫瘍の部分SAVIを留置することで、小線源治療を行います。

 

 

抗癌剤治療のタイミング

 

 

一般的な乳がんの治療の場合、切除手術が終わったらまず、抗がん剤の投与による治療を行い、その次に放射線治療を行います。

 

 

SAVIによる放射線治療経過イメージ

 

 

局所のがんを治す上ではできるだけ早く放射線を行うのが良いとされていますが、上で紹介した、SAVIを用いたAPBIによる放射線治療であれば、術後早期から行えるため、予後を考えた場合は、より推奨される選択肢と言えるでしょう。

 

 

乳がんの治療方針を決めるポイントは?年齢や体質を考慮して主治医と相談を

 

 

どの治療方法も、全ての人に適応できるわけではありません。

乳がんの治療の場合であれば、50歳以上の人やホルモン受容体の状態によってはAPBIによる治療が適応されないこともあります。

しかし、部分切除を希望し、その後の通院なども考えた場合にAPBIを選びたいという人は、まず、専門医に相談してみましょう。

 

 

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