肝臓にある腫瘍を調べる時に現在よく用いられてる方法として、ダイナミックCTやEOB-MRI、超音波検査の3つが挙げられます。
ダイナミックCTとは、肝臓や膵臓、胆のう、脾臓などの病気を診断する際に用いる検査方法で、造影剤を注入することで、その造影剤がどの程度到達しているか、異常な部分と正常な部分の違いを比較してどのような疾患なのかを判断するというものです。
EOB-MRIとは、従来から使われていたMRI用の造影剤に、肝細胞をよりはっきりと写す成分を加えて行うMRI検査です。
超音波検査とは、妊婦健診などでも用いられているいわゆる「エコー」のことで、皮膚に超音波を発信する装置を当てて、跳ね返ってくる音波を捉え、それを電気信号に変換するというものです。
妊婦健診で検査する胎児の様子と同じように、臓器や血管の状態も調べることができます。
これらの検査方法を組み合わせて、肝臓のどの部分に、どの程度の腫瘍ができているのかを調べていきます。
的確な診断は、ベストな治療方針の決定に不可欠ですから、それぞれの方法のメリットを生かして、患者の状態を正確に把握します。
肝臓にできるがんには、肝臓の細胞が癌化してできる原発性肝臓がんと、他の臓器からがん細胞が転移して肝臓で大きくなる転移性肝臓がんの2つがあります。
ここでは、主に原発性肝臓がんについてお話しします。
さらに原発性肝臓がんには、肝細胞が侵されるタイプの肝細胞がんと、肝臓内の胆管が侵されるタイプの胆管細胞がんがあり、この2つは治療法が大きく異なるため、治療方針の決定には正確な診断が非常に大切です。
胆管細胞がんは腺がんという種類のがんで、各種臓器の分泌腺組織に起こるがんです。
胃がんや子宮がん、乳腺がんなどがこのタイプに含まれます。
血流が乏しく、リンパ節に転移しやすいタイプのがんです。
治療法としては、手術、腺がんに対する抗がん剤が選択されやすく、それ以外の治療法に効果の高いものがあまりありません。
肝細胞がんの場合の治療法としては、手術が可能であればラジオ波灼熱療法といった腫瘍部分を焼き切る外科的手法を取ったり、切除で対処しきれない場合は肝動脈塞栓化学療法(TAE)という方法をとります。
TAEは、腫瘍部分を栄養している肝動脈にカテーテルを挿入して、塞栓物質と抗がん剤を注入することで、がんへの栄養供給を断ち、さらに抗がん剤でがん細胞を死滅させるという手法です。
カテーテルで局所的に抗がん剤の濃度を上昇させるため、従来の抗がん剤のように全身への投与よりも、より効果的にがん細胞を死滅させることができます。
また、近年では、免疫療法の研究が盛んに行われており、特定のがんについては、分子標的薬の適用も始まっています。
肝臓がんの治療方法には様々あり、それぞれにメリットがあればデメリットがあります。
同じ場所にできたがんであってもその人の肝臓の状態によっては選択できない治療もあり、治療後の生活への影響についても考慮しなければなりません。
肝臓がんについて熟知し、それぞれの治療の利点を最大限に活かせる治療方針の選択ができる専門の医師が主治医となって治療を進めていくことが重要です。