腹腔鏡手術は、2010年から保険適用されて標準治療となっています。
腹部に直径5~10mm程度の小さな穴を2、3個開け、そのそれぞれから腹腔鏡と腫瘍を摘出したりするための鉗子を挿入します。
腹腔鏡手術のメリットの第一としては、肉眼で見るのではなくカメラを挿入して患部を見るため、360度自由に解像度の良い視野を取ることができ、かつ開腹手術よりも傷がかなり小さく済むため、術後の回復も早いという点です。
傷が小さいことは、身体的な負担を軽くするだけでなく、手術に臨む患者の心理的なハードルを下げるポイントにもなっています。
誰しも大きく腹部を開く手術に対して足踏みしてしまうのは当然です。
腹腔鏡手術は、このような患者の手術への精神的ストレスの軽減にも一役買っていると言えるでしょう。
肝細胞がんは再発の可能性が大きいタイプのがんです。
同じ肝臓に再発したがんであっても、場所や大きさによってその治療方針は大きく異なる可能性があります。
局所的な治療としては一番治療効果が高いと言われているのが、腫瘍部分を外科的に切除してしまう方法です。
しかし再発によって、一度、開腹手術を行なった後で再び開腹する時に、癒着という現象が起こっている可能性があります。
これは、組織がダメージを受けて再生する過程で、余分な組織が形成されていき、本来は離れていた組織同士が張り付いてしまう現象です。
癒着が起こると、出血が多量になったり身体的な負担が大きくなる可能性が高く、手術をするのは困難になります。
再発肝がんで手術をする場合には、このようなデメリットも考慮しなければなりません。
再発してできた腫瘍が小さければで、ラジオ波灼熱療法という手法で焼き切ることができます。
これは、がんのある場所を超音波診断(エコー)で確認して、針の先からラジオ波というエネルギーの大きい波を出してがんを焼き切るという方法です。
また、先程紹介した腹腔鏡手術という方法もあります。
さらに、肝動脈塞栓化学療法という手法があります。
これは、腫瘍を栄養している肝動脈にカテーテルを挿入して、血管を塞栓する物質と抗がん剤を投入し、これによって腫瘍への栄養を遮断、さらに抗がん剤でがん細胞を死滅させるという手法です。
腫瘍の位置が把握できていれば、確実に腫瘍の部分に効果を発揮させることができるため、画期的な方法と言えるでしょう。
肝臓がんの治療はどのような状況でも、これがベストだという治療は1つではありません。
1つの病状に対して、複数の治療法を選択することができます。
この中で1人1人の状況によって適切なものは異なります。
どの治療法もそれなりに効果があるとされていますが、ガイドラインにある最適な治療がその人にとって最適とは限りません。
日々、医療は進歩してます。新しい治療法や新しい治療薬が日夜開発されており、その度に新しい組み合わせでベストな治療法が選択されることになります。
したがって、再発肝がんを含めて、肝臓がんの治療においては、様々な選択肢を提供している専門医を主治医として治療を進めていくことが大切です。