日本のがん診療は、新しくて有効な薬を出来るだけ早く承認し、かつ責任を持って全ての患者に提供している点で、他に類を見ません。これは裏返していうと、国が認めていない治療で有効な物はほとんどありません。真に有効ながん治療法は、国に申請して承認されれば多くの患者にとって大きなメリットになります。
多くのがん患者が「もっと良い治療はないか」と不安な気持ちの中で自分で探してしまう気持ちは非常によく分かりますが、日本全国のほとんどの病院で現在提供されている治療法は、全世界で行われている治療法の中でも最先端のがん治療です。
多くの国ではまだ使われていないような有効な薬も含めて、日本では保険診療が適用されています。
1つの病院でできる治療は別の病院でも行うことが出来るように、日本全体でがん治療の質は一定レベルに保つ努力がされています。
したがって、特定の病院やクリニックでしか行うことができないがん治療は多くの場合、本当に有効かどうかは分かりませんし、探索的な治療法になります。結果的に患者にとって不利益な結果に終わることが多いのです。
患者が求めている治療法と日本の医療で提供できる治療法は必ずしも一致しません。
国立がん研究センター中央病院のような大きな病院では集約化が進められていますが、一方で地域に根ざして診療を行っている病院もあります。ベストな治療を選ぶためには、どちらの病院が自分にとって良いのか、患者自身が主体的に選んでいく姿勢も必要です。
例えば、自宅に近い病院というポイントが自分にとっての優先度が高いのであればそちらを選択するということです。
標準治療(国が認めた最も良い治療法)が全国どこでも受けられるといっても、病院によって特色があり、それぞれで得意な分野や不得意な分野があります。
そのため、がん治療に臨む際には、自分のプライオリティに合致する病院の中で、がん治療が得意な病院を探すのが良いでしょう。
一方、国立がん研究センター中央病院のような大きな病院は、がん治療に特化した病院であり、がんに関する治療であればほとんど全て行える施設ですが、容態が変化した時に長期的な診療ができない・緊急対応ができないといったデメリットがあります。
患者の状態によっては、がん以外にも治療しなければならない疾患があるため、他分野の医師たちと共同で診療しなければならないケースもあります。そのような場合には、集約化された病院では診療が難しくなります。
どの病院が良いのか、というのは一概に決めきれない面があります。
ある程度、患者自身で自分の病気の問題点を把握して自分にとっても最も良いと思われる病院を探すのがあるべき姿でしょう。
選べる自由があるというのが、日本の医療の良い点でもありますし、これを上手に活用して、自分にとってベストな治療を探っていきたいものです。
がんの診断は、患者にとって重いストレスであり受け入れがたいものですが、誠実な治療を行う医師を信頼し、自分自身で最も良い治療を選び取ることが良い結果に繋がります。