肺がんの内視鏡手術(胸腔鏡手術)とは?

胸腔鏡下手術
肺がんの手術では、内視鏡(胸腔鏡)を使って行うことが増えています。内視鏡手術(胸腔鏡手術)のメリットは、傷が小さい分、体への負担が少なく、回復も早いことです。ただ、良いことばかりではなく、デメリットもあります。 肺がんの内視鏡手術の概要について、広島市民病院呼吸器外科の松浦求樹先生に教えていただきました。

9割の肺がん手術が内視鏡

肺がんの手術方法は、従来の「開胸手術」「内視鏡手術(胸腔鏡手術)」の大きく2種類があります。

開胸手術は、胸部を切開して、直接肉眼で見ながらがんのある部分を切除する方法。

 

内視鏡手術(胸腔鏡手術)は、「VATS(バッツ:Video-assisted thoracic surgery)」とも呼ばれ、皮膚を小さく切開して観察用のカメラや治療器具を挿入し手術を行う方法です。

私の病院では、一般的に3~4㎝の穴を1カ所、2㎝ほどの穴を2カ所の合計3カ所から、治療器具を挿入しています。

 

「開胸手術で行うか、内視鏡手術で行うか」の選択は、病院や医師によって異なります。

 

全国的には、ステージ1の早期肺がんのみ内視鏡で行うケースが多いかもしれませんが、私の病院では、肺がん手術の約9割を内視鏡手術で行っています。

 

内視鏡手術で行わないのは、がんがある部分を取り除いたあとに肺動脈や気管支をつなぎ合わせる「肺動脈形成」「気管支形成」が必要なケース、がんがかなり大きくなっているケースなどで、それが全体の1割ほどです。

 

肺がんの内視鏡手術のメリット・デメリット

開胸手術でも内視鏡手術(胸腔鏡手術)でも、がんができている部分の肺と周辺のリンパ節を切除するという手術内容自体は変わりません。

ただ、内視鏡手術は、傷が小さくてすむため、体への負担が少なく、手術後の痛みや胸水(胸にたまる水)の量も少なく、日常生活により早く復帰することができます。

 

また、開胸手術に比べて手術痕が目立たないという見た目上のメリットもあります。

 

一方、デメリットは、術者の慣れが必要ということです。

開胸手術では直接肉眼で見て自分の手で手術を行うのに対し、内視鏡手術では内視鏡(胸腔鏡)の映像をモニターで見ながら、挿入した治療器具を動かします。

 

胸腔鏡もモニターも性能が良くなっているので、肉眼で見るよりも細かく見えますが、モニターを見ながら操作するには慣れが必要で、術者の技術の差が出やすいのです。

習得に必要なトレーニングの量は個人差がありますが、やはり、ある程度症例数を重ねている施設、医師のほうが安心でしょう。

 

また、手術中に予期せぬ出血などが起こったときの対応は、開胸手術に比べてやや遅れがちです。

 

そのため、施設ごとに「出血が500ccを超えたら、開胸手術に移行する」といったルールを設けており、そういう意味でも、経験豊富な医師のほうがトラブルへの対応にも慣れています。