肝細胞がんは症状が出にくいがんの1つと言われています。多くの患者は症状が無いままに来院します。
つまり、健康診断でがんの疑い有りと指摘された場合や、採血の数値が変化したことを指摘されて精査することで見つかるというケースが多いのです。
新規の患者の数は減少傾向にあり、これは肝炎ウイルスの罹患者数の減少していることが理由の1つとして考えられます。
しかし、今まで肝炎ウイルスに罹ったことのない人やアルコールを大量に摂取しているわけでもない人であっても、肝細胞がんに罹患するという傾向があります。この1つの原因として、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という概念があります。これは10~15年前から出てきた考え方です。このような新しいリスクを持った人が肝細胞がんに罹患する患者となる傾向があります。
肝臓がんの治療方法は、他のがんに比べて非常に多彩です。
例えば「ラジオ波焼灼療法」という治療法では、針を刺して病巣を焼き切ります。また、血管内治療(カテーテル療法)では、肝臓へ向かう血管にアプローチして、抗がん剤の投与や血流の遮断を行います。
さらに、放射線療法や薬物療法などもあります。
患者にとってどの治療が適切かという判断は、それぞれの治療を担当する医師たちが意見を出し合って、一番良い治療法を選ぶという流れが適切です。
肝細胞がんの治療における外科的治療には、従来の方法である開腹術と、腹腔鏡手術(内視鏡手術)があります。
どちらの方法が良いのかはその患者によって異なりますが、その判断の要素には2つのポイントがあります。
1つ目は、手術の複雑さです。いかに負担の少ない手術とはいえ、腹腔鏡下の手術では、切った部分を繋げ直す、などの作業が困難になります。
単純に肝臓を取り去る、という点では腹腔鏡下の手術は侵襲も少なく、非常に良い方法です。
近年の技術進歩によって、開腹手術と比べると同等か、場合によっては出血量の軽減などで非常に優位な点も多くあります。
2つ目は、手術を担当する外科医が腹腔鏡手術を得意としている医師かどうかという点です。
現状、腹腔鏡下手術は全ての外科医が得意としている手技ではありません。それなりの症例を経験しなければ身につけることのできない技術です。
日本内視鏡外科学会などでは、一定の内視鏡手術スキルを持った医師に認定を授ける認定制度がありますが、その認定医制度の1つに肝臓手術の認定制度があります。
このような第三者による評価で、腹腔鏡手術を安全かつ確実に行える医師を認定する取り組みも行われています。この認定を持っている医師かどうかというのが、1つの指標となります。
肝切除の手術を受ける患者のおよそ70~80%が腹腔鏡手術を受けています。多くの外科医が腹腔鏡手術のスキルを身につけることができれば、この位の施行率が適切だろうと言われています。