転移性肝腫瘍と肝門部胆管がんの治療法:根治は可能?治療困難ながんとは?

肝門部胆管がん
転移性肝腫瘍
多くのがんは最終的に肝臓に転移して肝腫瘍を形成します。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、炎症や腫瘍があっても初期にはほとんど自覚症状がありません。つまり、他のがんの検査やがん検診などで偶然発見されることが少なくないがんです。 今回は、転移性肝腫瘍と肝門部胆管がんの具体的な治療法や、その治療におけるシビアな管理の内容などについて、その慶應義塾大学病院・一般/消化器外科の阿部 雄太先生に教えていただきました。

 

転移性肝腫瘍の治療法:多くは大腸がん由来、完全切除で根治も可能

 

 

転移性肝腫瘍の原発巣

 

 

多くのがんは最終的に肝臓に転移します。これは、血流の流れや代謝の関係から必然とも言えることです。

その中でも、大腸がん患者の肝転移は肝臓の腫瘍を切除することで、40%前後が根治可能と言われています。

結果的に、肝臓外科医たちが切除する転移性肝腫瘍の多くは大腸がん由来の腫瘍となっています。

 

 

大腸がんによる肝転移腫瘍の切除は、その腫瘍全てを取り切ってがんが全て無くなる、ということが原則です。

同じ大腸がん肝転移であっても患者によってその様子は様々で、腫瘍が1個しか無いケースもあれば、10個以上見つかる人もいます。

主治医である大腸外科の医師だけでなく、肝臓の専門医ともよく相談して、体力的な問題や全身状態を考慮して、肝切除でがんが取り切れると判断される場合は、手術を行うチャンスがあります。

 

 

肝門部胆管がんの治療法:簡単に手術をできないがん、治療管理は非常にシビア

 

 

肝門部胆管がんの位置

 

 

胆管がんは、「胆汁」と呼ばれる、肝臓で作られる消化液が流れる道である胆道・胆管に発生する悪性腫瘍です。

その中でも「肝門部」と呼ばれる肝臓の入口にできるがんは、最も治療が困難であると言われています。

 

 

肝門部はその名の通り、肝臓の出入り口であり要の部分です。肝門部胆管がんの切除術では、その場所にできたがんを、取り残し無く切除した上で、残った肝臓が機能を維持できるように温存する必要があります。

肝門部胆管がんの治療は、すぐに手術を出来るわけでは無いという点も特徴です。

 

 

胆道ドレナージの方法(閉塞性黄疸の治療法)

 

 

例えば、黄疸があり、その結果肝臓が一時的に非常に弱った状態であれば、大きな手術には臨めません。

1ヶ月半から2ヶ月程、黄疸が消えるまで待ったり、あるいは手術前に肝臓をある程度大きくしておいて、温存する範囲を広く取る、といった処置を行う必要があります。

しかし、胆管がんの場合、胆汁の流れを塞いでしまうなどして細菌感染(胆管炎)を起こすリスクがあります。

結果的に、1ヶ月半から2ヶ月の待機期間の間にがんが進行したり、全身状態の悪化などによって、手術に至れないケースもあります。

そのため、この辺りの調整を上手く行いながら手術に至るまでを管理する必要があります。

 

 

肝門部胆管がんの治療に臨む際には、多くの胆管がんの患者を治療してきた実績のある病院で、各診療科や各プロフェッショナルのチーム体制が整っている、という環境の中で、さらに経験のある医師が手術を行うのが適切と言えます。

 

 

2000年以降の肝門部領域胆管がんに対する手術成績

 

 

肝門部胆管がんは、手術後5年生存率が平均で40%程度であり、再発の多いがんと言われています。

手術の適用をしっかりと判断できる経験豊富な医師の元で手術を受けることが重要と言えるでしょう。

基本的には外来診療で長期のフォローを行い、出来るだけ早期のタイミングで再発を見つけられる環境を作っていきます。画像による再発チェックを行うのが一般的です。

 

 

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