膀胱がんの自覚症状として一番多いのは「肉眼的血尿」と呼ばれる、尿が血の色で赤くなる症状です。
特に50歳以上の人で肉眼的血尿が見られた場合は、膀胱がんを疑い、必ず一度は精査する必要があります。
膀胱がんが疑われた場合の検査では、まず尿検査を行い尿中の白血球・赤血球の度合いを見ます。
また「尿細胞診」と呼ばれる検査も行います。これは、尿中に異型細胞(がん細胞の可能性がある細胞)やがん細胞が無いかをチェックする検査です。
さらに画像検査を行う場合は、超音波検査やCT検査、内視鏡検査などを行います。
内視鏡検査では尿道から内視鏡を入れて、実際に膀胱の中を見て調べます。
内視鏡検査は膀胱がんの確定診断のために行うことがあります。
がんの局所における進行度をTステージという指標で表します。Tステージは治療の方針の決定に大きく関わる重要な指標の1つです。
膀胱がんが疑われた場合には、Tステージの確定診断とその後の治療のために、入院をして内視鏡を用いた手術を行います。
ここで腫瘍があれば内視鏡下で切除も行います。このような手術を「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」と言います。
膀胱がんにもいくつか種類があり、そのうち60~70%は筋層まで浸潤していない「非筋層浸潤性膀胱がん」です。
膀胱など粘膜組織はいくつかの層に分かれており、そのうち筋層は深部の層にあたります。
つまり、筋層まで浸潤していない膀胱がんはまだ深部までがんが進行していないということになります。
経尿道的膀胱腫瘍切除術によって非筋層浸潤性膀胱がんと診断された場合には、手術のみで根治が可能なケースもあります。
ただし、多発症例や上皮内がんを併発しているケースでは高確率で再発を起こします。
また、手術だけでは切除が困難ながんであるケースもあるため、その場合は「膀胱内注入療法」を行います。
この治療法では予防接種にも用いられるBCGを注入するのが一般的で、外来による治療で併用することもあります。
非筋層浸潤性膀胱がんは約50%の確率で膀胱内再発を起こします。そのため、膀胱内注入療法などで予防的投与を行うことも含めて、定期的な外来診療でのフォローが必要になります。
非筋層浸潤性膀胱がんは、がんの進行度でいうとステージⅠに当たります。
これが筋層まで浸潤するとステージⅡ以上になります。がんがどのステージにあるかによって治療の方針は異なります。
ステージⅡやⅢの膀胱がんであっても他臓器への転移がなければ、膀胱全摘術が適用されます。
筋層まで浸潤しているがんは高確率で他の臓器へ転移するため、膀胱を全摘することでがんの根治を目指します。
すでに転移がある場合は、全摘術以外の治療法(抗がん剤療法や放射線照射療法など)を検討します。
ただし、筋層まで浸潤したがんの場合は、膀胱を全摘しても一定の割合でリンパ節転移や術後再発が起こります。
そのため最近では、全摘術を行う前に抗がん剤療法を併用するケースが多くなっています。
これは、がんの大きさを出来るだけ小さくして、膀胱を全摘した時にがん細胞の取り残しがないようにする目的で行います。
膀胱がんは多発性ですが、同時に起こるのではなく時期をずらして再発することが多いがんです。
また、膀胱がんの10~30%は上部尿路上皮がんで、これは膀胱がんだけでなく、腎盂がんや尿管がんといった、尿路にある他の臓器のがんも引き起こす可能性があるといわれています。
つまり、筋肉に浸潤していない非筋層浸潤性膀胱がんであっても、尿路全体に再発が起きやすいという問題があるのです。
これを防止するための様々な対策が、考えられています。