膀胱がんの治療における膀胱全摘術と尿路変向術の2つの方法、再発防止に有効な膀胱内注入療法とは?

膀胱がんの手術では、腫瘍の局所切除以外にも、しばしば全摘術が行われます。膀胱がんの治療における膀胱全摘術では具体的に何が行われるのか、また膀胱全摘術に伴う尿路変向術とは何か、さらに膀胱がんの外科的治療と併用される事の多い膀胱内注入療法などについて、東京慈恵会医科大学附属柏病院・泌尿器科の三木 淳先生に教えていただきました。

 

膀胱がんの治療における膀胱全摘術とは:摘出は膀胱だけではない!さらに尿路変向術も行い長時間の手術に

 

 

膀胱全摘除術の摘出範囲

 

 

膀胱がんの治療で行う膀胱全摘術では、男性の場合は、膀胱とともに前立腺も同時に切除します。

女性の場合は、膀胱に加えて子宮・卵巣を同時に切除するのが標準的な治療です。

 

膀胱は尿を貯める臓器なので、切除するだけではなく「尿路変向術」という尿を別の経路で排泄できるような手術を同時に行う必要があります。

 

さらに、リンパ節転移があるような筋層浸潤性膀胱がんのケースでは、リンパ節郭清(腫瘍周囲のリンパ節を切除してさらなる転移を防ぐための手術)も行います。

このため、膀胱がんの手術はトータルすると6~10時間と非常に長い手術になり、術中の出血や術後の合併症の確率も高い手術とされています。

 

 

膀胱摘出後のストーマについて

 

 

また、尿路変向の手術ではおよそ半数以上のケースで手術中の輸血が必要になるような、腸管を使った尿路変向を採用することが多いようです。

これは「回腸導管」と呼ばれ、小腸のうち回腸の部分をストーマ(人工肛門)として体外へ出して排泄できるようにするか、もしくは回腸で新しく膀胱を作る手術を行います。

 

いずれにしても腸管を利用するため、術後の腸閉塞のリスクが高くなります。

 

 

膀胱がん全摘術における腹腔鏡手術のメリット:低侵襲手術で患者負担を減らし合併症も軽減する

 

 

膀胱がん全摘術は非常に長丁場の手術であり、合併症も多く、患者への負担が非常に大きい手術です。

そのため、出来るだけ侵襲を少なくして患者の身体的負担を減らす目的で、腹腔鏡手術が普及してきています。

 

 

最近では特にロボットの補助下での腹腔鏡手術が日本でも徐々に浸透してきていると言われています。

膀胱がん全摘術における腹腔鏡手術の最大のメリットは、輸血の必要がほとんど無くなるということです。

さらに、傷が小さく、腸が術中に体外へ曝露する時間が短いため、腸閉塞などのリスクも軽減されます。

 

 

膀胱がん全摘術おける尿路変向術とは:大きく分けて2つの方法、どちらが良いかは患者のニーズによる

 

 

膀胱がんを全摘すると必ず尿路変向術を同時に行う必要があります。

 

 

1つの方法は、回腸導管や尿管皮膚ろうなどのように尿がそのまま体外に出るような仕組みを作る、失禁型尿路変向術です。

もう1つの方法は、腸管などを用いて新しく膀胱を作り、尿が漏れないように自分で尿をできるようにする禁制型尿路変向術です。

 

 

どちらの方法がより患者にとって良いのかという点ですが、必ずしも膀胱を作らなくても患者の術後QOL(生活の質)は良いとするデータはあります。

どちらを選ぶにせよ、まずは患者本人のニーズにあった尿路変向術を決める必要があります。

 

 

新膀胱造設イメージ図

 

 

東京慈恵会医科大学附属柏病院では、原則的に新膀胱を造設する禁制型尿路変更術が第1選択となっています。

ただし、腎臓機能や膀胱における腫瘍の位置、過去の手術歴などを考慮して新膀胱の造設が適用にならない患者もいます。

また、女性は男性に比べて禁制(尿が漏れないように自分でコントロールすること)が保ちにくいという報告があり、男性の方が新膀胱の造設が推奨されやすいとされています。

 

 

膀胱内注入療法とは:再発防止・膀胱温存のための治療

 

 

膀胱内注入療法は、非筋層浸潤性膀胱がんで、特に再発しやすいとされているケース上皮内がんに適用される治療法です。

これらの膀胱がんは根治的な切除が手術のみでは難しいケースが多く、膀胱内注入療法を併用することで根治を目指します。

 

 

膀胱内注入療法では、BCG(結核の弱毒素)などを膀胱内に週1回、6~8週ほど継続して注入します。

最近では、これを維持療法として数ヶ月おきに継続して注入するという方法も行われています。

膀胱を再発から守る、もしくは膀胱を温存することが主な目的です。