転移を見極め手術の負担を減らす!SNNSによるがんの外科治療とは?

がんの治療法には、外科的切除の他、放射線治療や化学療法など様々な選択肢があります。その中でも外科的切除に関しては、医学・技術の進歩によって、より患者さんにとって負担の少ない、回復の可能性が高い方法が開発され続けています。SNNSもそのような手術の1つです。 今回は、SNNSの具体的な方法や、手術中に行う検査の流れ、適応される疾患などについて、日本医科大学・消化管内科の後藤 修先生に教えていただきました。

 

センチネルリンパ節ナビゲーション手術(SNNS)とは?

 

 

「センチネルリンパ節ナビゲーション手術(SNNS; Sentinel Node Navigation Surgery)」では、がんの原発巣から最初にリンパ流が到達するリンパ節を「センチネルリンパ節」と定義して、

そこにがんの転移が認められない場合には、それより下流のリンパ節にも転移が無いという考え方をします。

 

その理論を応用して、センチネルリンパ節に転移が無ければ、リンパ節郭清の範囲をより縮小できるという手術が、センチネルリンパ節ナビゲーション手術です。

 

「リンパ節郭清」とは、がんの病巣周辺など、がんの転移が考えられるリンパ節を全て切除する手術のことを指します。

 

 

センチネルリンパ節生検の検査:手術中に迅速診断し、転移の有無を確認

 

 

SNNSを行うときにはまず、センチネルリンパ節を特定する必要があります。

センチネルリンパ節を検出するための物質を「トレーサー」と言い、このトレーサーを病変の周囲に局所的に注射することで、流れを見ながらセンチネルリンパ節を特定していきます。

センチネルリンパ節が特定できたら、次は術中にセンチネルリンパ節を切除して、病理医に「術中迅速病理診断」をしてもらいます。

病理診断によってセンチネルリンパ節に転移が無いことが確認された場合には、リンパ節の切除範囲をなるべく小さくして、リンパ節郭清を行います。

これに伴って、原発巣の切除範囲も縮小させることが出来ます。

 

 

一方、術中迅速病理診断において「センチネルリンパ節に転移良性」と診断された場合には、センチネルリンパ節よりも下流のリンパ節にもがんが転移している可能性があると仮定して、標準手術(定型手術)を行なっていきます。

SNNSで用いられる使用器具は、トレーサーを検出するRI(放射性同位元素)のカウンターです。

これを術中に用いて、センチネルリンパ節に放射性同位元素が含まれているかをカウントします。

 

SNNSで用いられるトレーサーには主に2種類あり、1つは放射性同位元素で、もう1つは「インドシアニングリーン(ICG)」と呼ばれる緑色の色素です。

これら2つのトレーサーを併用した「A dual-tracer method」が一般的に利用されています。

 

手術前日にRIのトレーサーを、手術の当日にICGのトレーサーを、それぞれ内視鏡を用いて、原発巣の周囲4箇所に注入します。

手術中はICG色素の流れを見て、センチネルリンパ節を決めていきます。

最終的には、色素によって染色されたセンチネルリンパ節を切除し、手術室のRIカウンターを用いて、染色されたセンチネルリンパ節にRIが含まれていることを確認して、確実にセンチネルリンパ節を特定することが出来ます。

 

 

術中迅速病理診断

 

 

センチネルリンパ節生検の適応:先進医療であり、適応範囲は狭い

 

 

センチネルリンパ節を指標とした個別化手術は、先進医療扱いであるため、適応疾患が厳密に規定されています。

具体的には、ステージⅠAの4cm以下、単発の病変が適応となります。

例えば、内視鏡治療等の治療歴が無い、早期胃がんはセンチネルリンパ節生検の適応対象です。

 

 

SNNSを先進医療Bとして行なっている施設としては、慶應義塾大学病院、浜松医科大学医学部付属病院、鹿児島大学病院、金沢医科大学病院などがあります。