胃がんは、早期で見つかる場合、たまたま検診で発見されることがほとんどです。
進行がんの場合は、会社の健診などの血液検査で貧血が指摘され、内視鏡検査を勧められて見つかることが一般的です。
胃がんと聞くと、「痛み」「吐血」といった症状を思い浮かべるかもしれませんが、急性潰瘍や急性胃炎のほうが、そうした症状が明確に出やすく、胃がんは症状が乏しい病気だと思います。
より進行して、胃の出口が詰まったりすると、吐き気や嘔吐、食欲がないといった症状を訴えて来院される患者さんはいますが、ほとんどの胃がんの患者さんは、無症状か、採血上の貧血です。
早期の胃がんであれば、「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」が、第一選択肢になります。
口から胃カメラを入れて、がんができている部分を電気メスで焼き切る治療法です。
ただし、早期の胃がんであっても、20%弱の方はリンパ節に転移があります。
「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」ではリンパ節はとれないため、早期の胃がんのなかでも、リンパ節転移がないことが高い確率で予測される患者さんに限って、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は行われます。
手術前のCT検査やPET-CT検査などで「リンパ節転移はない」と診断されても顕微鏡学的な微細なリンパ節転移を否定することはできません。
その場合、胃とリンパ節を切除する手術を行うことになります。
胃がんの手術には、
・胃を全部取る手術
・胃の3分の2ほどを取る手術
・幽門(胃の出口部分)を残して胃を取る手術
など、いくつかのパターンがあります。
また、手術の方法にしても
・腹部に大きくメスを入れる「開腹手術」
・小さいキズで行う「腹腔鏡手術」
・腹腔鏡手術を進化させた「ロボット手術」
と、バリエーションがあります。
開腹手術に対する腹腔鏡手術のメリットは、キズが非常に小さいことです。
美容上の利点だけではなく、キズが小さくなると手術後の体の回復が早いことが医学的に証明されています。
術後の経過の改善に寄与することは間違いないでしょう。
では、腹腔鏡手術に対するロボット手術のメリットは何でしょうか。
キズの大きさは変わりません。
議論の余地はありますが、手術支援ロボットはさまざまな技術的なハードルを克服できるツールですので、胃がんにおいては、手術後の合併症など、良くないことが起こる確率を有意に減らすことができました。
ということは、「腹腔鏡手術よりもロボット手術のほうが、安全性が高い」とは言えるでしょう。
ただし、「がんが治る確率が、ロボット手術のほうが高いか」は、まだデータがありません。
ロボット手術は、外科領域における一つのトピックではありますが、あくまでも「腹腔鏡手術の進化版」です。
そのほか、胃がん治療における新しいトピックと言えば、日本で開発された免疫チェック阻害剤<一般名:ニボルマブ>が、胃がんに対しても保険診療で行われるようになりました。
新しい胃がんの治療法として、今後に期待されています。