内視鏡でがんを取るには――胃がん、大腸がんの内視鏡治療

内視鏡治療
EMR
ESD
胃がんや大腸がん、食道がんなど消化器にできたがんを切除するには、外科手術ともう一つ、「内視鏡治療」という選択肢があります。 内視鏡とは、先端に小型カメラがついた細長い管状の治療器具のこと。この内視鏡を口または肛門から挿入し、体内を確認しながら治療を行うのが、内視鏡治療です。 体の外側からメスを入れる外科手術に比べて、体の内側から病変(がんや線種など)を取り除く内視鏡治療は、体にやさしい治療法です。 内視鏡治療とはどんな治療で、どういうがんが適応となるのか、開運橋消化器内科クリニックの遠藤昌樹先生にうかがいました。

内視鏡治療の対象は?

内視鏡治療の対象となるのは、胃、食道、大腸、十二指腸です。

 

では、胃がんや食道がん、大腸がんがすべて内視鏡で治療できるかというと、もちろんそうではありません。大原則として、次の2つを満たしているものが内視鏡治療の適応となります。

1.内視鏡治療は胃や食道、腸の中でしか切除できないので、内側を切除することで完治する病気であること

2.いくつかに分けて切除するのではなく、一つのかたまりとして一括切除できること

 

内視鏡治療の種類――「EMR」と「ESD」

20~30年ほど前から普及している内視鏡治療の方法が、「EMR」(Endoscopic Mucosal Resection:内視鏡的粘膜切除術)です。

「スネア」と呼ばれる金属の輪っかを病変にかけ、キュッと締めた後、電流を流して焼き切る方法で、日本中どこでも安全に受けることができます。

 

ただし、大きさに制限があります。

EMRは、輪っかをかけて焼き切る方法なので、スネア(輪っか)よりも小さい病変であれば一括で取れるだろうと考えられがちですが、実際は2センチ未満の小さいものしか取れません。

 

取り残しがあると再発にもつながりますので、その解決策として開発されたのが「ESD」(Endoscopic Submucosal Dissection:内視鏡的粘膜下層剥離術)です。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、粘膜下層に液体を注入して病変を浮き上がらせた後、専用のメスで薄く剥がしていく方法です。

 

内視鏡治療のメリット

EMRにしてもESDにしても、内視鏡治療の最大のメリットは、臓器の大部分を残せること。

 

がんや線種(良性の腫瘍)などの病変がある部分だけを切除し、ほかの部分を残すことができるため、手術の前後で食事量も体力もほとんど変わらず、日常生活を送ることができます。

 

また、外科手術では、臓器をとる、全身麻酔をかけるというハードルがありますが、内視鏡治療の場合、部分切除で全身麻酔は必要ありません。

そのため、初期のがんには限られますが、年齢や全身状態などについては、外科手術に比べて幅広い患者さんに受けていただけます。

 

内視鏡治療医の選び方

内視鏡治療を受ける病医院、医師を探すには、経験数を調べるといいでしょう。

 

自分と同じ病気に対して、その施設ではどのくらい内視鏡治療の経験があるのか、率直に訊ねることをおすすめします。

そうすると、即座に答えてくれるはずです。

 

内視鏡治療は、確実にメリットの大きい治療です。

ただし、前述した通り、どんながんでも内視鏡で治療できるわけではなく、初期のがんに限られます。

 

初期の段階で病気を見つけるには、やはり症状があってからの受診ではなく、定期検査が不可欠です。

胃カメラや大腸カメラなどで検診を受け、二次検診の必要性があったら、必ず精密検査を受けてください。

 

症状の出る前に見つけられれば、外科手術ではなく、内視鏡で治療が行える可能性が高まります。

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