ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは
内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)とは、内視鏡治療の一種です。
胃や大腸など、消化器に出来た病変(早期がんや腺腫など)を切除するために行われます。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)では、切除出来る範囲が、スネアの大きさ(約2cm程度)までと制限があるのに対し、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)では、より広い範囲を一度に切除することが出来ます。
2006年に胃のESDが、2008年に食道のESDが保険適応となりました。
また、2012年には大腸のESDも保険適応となっています。
まず、拡大内視鏡を用いて腫瘍の切除範囲を決定します。
その後、粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウムや生理食塩水などの液体を注入し、病変の部分を隆起させます。
そして、隆起した病変部の周囲の粘膜を、専用の高周波メスで切開していきます。
最後に、粘膜下層を徐々に剥離し、病変を切除します。
内視鏡を用いて消化管の内側から治療を行うため、開腹手術のように大きな傷を付けなくても行うことができます。
また、ESDでは、EMRより広い範囲を一度で正確に切除することが出来る点もメリットです。
EMRは、スネアをかけた時に滑って位置がずれることがあり、一度で病変を取り切れないことがあります。
一方、ESDは確実に狙った場所を切除することができます。
内視鏡治療全般に言えることですが、ESDを適切に行うには術者の技術が要求されます。
特にESDは、EMRよりも熟練した手技が必要となり、慣れている医師が行うことが大切です。
また、ESDは、消化管に穴が開いてしまう穿孔の危険性が3~5%程度と、従来の術式よりも大きくなっています。
メリットとデメリットを主治医の先生によく説明してもらった上で、納得して手術を受けることが必要です。