咽頭とは、のどにある部位で、鼻の奥から食道の入り口にある管のことです。咽頭は、上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分けられます。
表在咽頭がんは、いずれかの部位に発生し、筋肉まで浸潤しておらず、上皮もしくは上皮下組織に浅く留まるものを指します。
がんのタイプにはいくつかありますが、表在咽頭がんのほとんどは扁平上皮がんです。日本人の食道がんの約90%を占め、非常に多いタイプの腫瘍です。
表在咽頭がんは、近年少しずつ増加傾向にあります。
咽頭がんの主な危険因子は、飲酒と喫煙です。特に、少量の飲酒で顔が赤くなるフラッシング傾向がある人は咽頭がんの発症リスクが高いといわれています。
そのほかに、食道がんや咽頭がんの治療歴がある人、緑黄色野菜不足、BMIが低いやせ型の人なども咽頭がんになりやすいといわれています。
初期の咽頭がんでは自覚症状がないことも少なくありません。
咽頭がんに気づくきっかけは、のどの違和感や痛み、痰に血が混じるといった症状が現れ、受診される方が多くなっています。頚部のリンパ節に転移した場合、首のしこりに触れて異常に気づく場合もあります。
最近では、消化器内視鏡医の診断技術の向上や内視鏡機器の精度が高まっていることから、咽頭がんを早期に発見できるようになってきました。健康診断で咽頭がんが見つかるケースも増えています。
咽頭がんを早期発見するためには、内視鏡検査が欠かせません。小さな咽頭がんでも早期に見つけるためには、熟練した内視鏡専門医による診察を受けることをおすすめします。
咽頭がんが見つかった場合は、がんの広がりや転移の有無、全身状態をチェックするために頚部の超音波(エコー)検査やCT検査などを行います。
内視鏡にはスコープが細い「細径内視鏡」とスコープが10mm程度の「通常径内視鏡」があります。通常径内視鏡には、機種によって拡大機能が付いています。
細径内視鏡は患者さんの苦痛を抑えられることが大きなメリットです。
一方、拡大機能付きの通常径内視鏡は、拡大して見ることで良性か悪性かをより正確に診断できることが特徴です。
それぞれの内視鏡で異なる利点があり、患者さんの状態などによって選択されます。
内視鏡検査で用いる鎮静剤には、苦痛を取り除く「鎮痛剤」と眠った状態にする「鎮静剤」があります。
咽頭を観察する時は、「いー」と発声することで声帯が閉じて、食道の入り口にある左右の梨状陥凹(りじょうかんおう)が拡がる状態が望ましいとされています。なぜなら、咽頭がんの約70%が起こる好発部位であるため、しっかり観察することが重要だからです。
また、息をこらえた後に一気に吐き出す動作も、咽頭が見えやすくなることから検査時に行う方法の一つです。
眠ってしまうとこのような指示動作が難しくなるため、同院では基本的に鎮痛剤を使用し、不安や嘔吐反射が強い方にはごく少量の鎮静剤を併用する形で対応しています。